伝染性膿痂疹[とびひ]|細菌感染症①

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は伝染性膿痂疹[とびひ]について解説します。

 

池田政身
高松赤十字病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1皮膚の浅在性細菌感染症の代表的なものであり、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌により生じる。

2おもに夏場に幼小児に好発する水疱性膿痂疹と、季節を問わず、大人にも生じ、厚い痂皮を伴う痂皮性膿痂疹に分けられる。

3病変部を洗浄し、抗菌薬の外用、内服を行う。

4水疱性膿痂疹では適切な治療をすれば3〜4日で乾燥し、1週間ほどで治癒する。痂皮性膿痂疹ではやや長引く。

 

伝染性膿痂疹[とびひ]とは

定義・概念

おもに幼小児に夏季に好発する水疱性膿痂疹と、大人にも季節を問わず出現する痂皮性膿痂疹に分けられる1)。いずれも感染力が強く、接触感染により伝染する。水疱性膿痂疹はアトピー性皮膚炎や虫刺症などの際、搔破により二次的に発症することも多く、その場合は膿痂疹性湿疹とよばれる。

 

因・病態

水疱性膿痂疹のおもな病原菌は黄色ブドウ球菌である。細菌が産生する表皮剝脱毒素(exfoliative toxin:ET)により表皮細胞のデスモグレインが分解されて、表皮細胞の結合がバラバラになり、水疱が生じる。近年、市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が増加している。痂皮性膿痂疹のおもな原因菌は化膿性連鎖球菌であり、皮膚表面に感染し、痂皮を伴う炎症の強い病変を形成する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

水疱性膿痂疹では水疱→びらん→痂皮を形成する(図1)。

 

図1 水疱性膿痂疹(上腕部)

水疱性膿痂疹(上腕部)

痂皮性膿痂疹では厚い痂皮で覆われた赤みの強い丘疹を生じる 2)

 

検査

病変部から細菌培養を行い、原因菌の同定および感受性検査を行う。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

セフェム系やペニシリン系の抗菌薬内服を行う。軽症であればテトラサイクリン系、ニューキノロン系やフシジン酸の外用剤塗布でも治療可能である3)

 

合併症とその治療法

湿疹続発性の場合は、ステロイド外用剤の併用が必要となる。

 

治療経過・期間の見通しと予後

適切な抗菌薬を投与すれば、1週間足らずで瘢痕を残さず治癒する。

 

看護の役割

治療における看護

・石鹸などによる洗浄で皮膚の清潔を保ち、スキンケアと外用療法を行う。
・湿疹病変が合併する場合は、湿疹の治療をしっかり行う。また、引っ搔くと拡大するため、かゆくてもがまんするよう指導する。
・容易に他人に伝染するため、水泳などは禁止する。
・病変が狭い場合は外用剤を塗布し、包帯などで覆えば通園は可能であるが、病変が広範囲の場合は休園を指示する。

 

 

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引用・参考文献

1) 池田政身:伝染性膿痂疹.皮膚科の臨床57:688-690,2015

2) 池田政身:専門医にきく子どもの皮膚疾患 Ⅵ.感染性皮膚疾患 伝染性膿痂疹・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)・丹毒・蜂窩織炎.小児科診療72:2151-2156,2009

3) 五十嵐敦之:伝染性膿痂疹.小児科臨床ピクシス17 年代別子どもの皮膚疾患(五十嵐 隆ほか編).p.168-169,中山書店,東京,2010


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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