母乳分泌と射乳のしくみ

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は母乳分泌と射乳のしくみについて解説します。

 

立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授

 

 

母乳分泌の仕組み

妊娠中は初期には卵巣から、中期では胎盤からエストロゲンプロゲステロンが分泌されている。主にエストロゲンは乳腺の発育に作用し、プロゲステロンは乳腺葉の発育を促進させている。

 

ただし、エストロゲン、プロゲステロンが乳汁分泌ホルモンであるプロラクチンの分泌を抑制するため、妊娠中の乳汁の分泌は阻止されている。しかし、分娩終了による胎盤娩出後にはその抑制が解かれ、乳汁の産生と分泌が始まる。

 

乳汁の産生:分娩で胎盤が娩出されると、胎盤から分泌されていたエストロゲンとプロゲステロンが急激に低下する。乳汁分泌抑制が除去されたことで、プロラクチンが乳腺に作用し、乳汁産生を開始する。
乳汁分泌抑制が除去されたことで、乳腺の腺房腔内のプロラクチン受容体が増加し、血中プロラクチンと結合し腺房細胞を刺激することで、本格的に乳汁産生が開始する。

 

乳汁の貯蓄:乳腺で産生された乳汁は、乳管を通って乳管洞に溜まる。乳輪下筋組織はまだ収縮しないため、乳汁は分泌されない。

 

乳汁の分泌図1):乳頭の刺激(吸啜やマッサージ)により母親の視床下部が刺激され、下垂体後葉からオキシトシンが分泌される。このオキシトシンが乳汁を乳房から押し出す。

 

図1 乳汁分泌

乳汁分泌
画像を見る

 

 

目次に戻る

射乳の仕組み

第1ステップ:児の吸啜刺激により、乳頭と乳輪部への知覚神経が刺激される。
第2ステップ:脊椎を経由して、母親の視床下部の室旁核が興奮し、オキシトシンの分泌が亢進する。
第3ステップ:下垂体後葉にある神経末端からオキシトシンが血液中に放出される。
第4ステップ:オキシトシンが血液中に入り、乳房に運ばれ、乳腺を取り巻く筋上皮が収縮する。そして、乳腺房内の乳汁が太い乳管の拡張した部分の中へ移動し、圧出される(図2)。

 

図2 射乳

射乳
画像を見る

 

 

目次に戻る

 

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ