外陰部と痔核のケア

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は外陰部と痔核のケアについて解説します。

 

土川 祥
滋賀医科大学医学部看護学科講師

 

 

外陰部と痔核のケア

分娩時の圧迫や伸展により生じた外陰部の浮腫や腫脹、裂傷後の血腫、会陰切開や会陰裂傷後の縫合により、分娩直後の褥婦は外陰部の違和感や疼痛を訴えることがある。会陰部縫合時に断裂血管が止血されていないと血腫が形成されることもあり、分娩経過を把握し、観察を行うことが必要である。

 

会陰部の痛み

会陰裂傷や会陰切開の有無にかかわらず、産褥1日目まで多くの人が会陰部の痛みを感じるという報告もある1)。また、妊娠中から骨盤内血管は怒張しているため断裂しやすい状況にあるため後腹膜腔血腫が起こることがある。そのため、鼠径部の圧痛も含め、外陰部周囲の観察は大切である。

 

また、妊婦の30~40%に痔核はよくみられる疾患である。妊娠中増大した子宮による圧迫や、プロゲステロンの影響により血管叢が拡張し痔核が形成されやすくなる。さらに、分娩第2期の児頭下降と腹圧により、さらに痔核が脱出しやすくなる。

 

このような外陰部や痔核の痛みや不快症状は、日常生活行動だけでなく、授乳行動の妨げになることがある。看護者は、経時的に外陰部の観察を行い、疼痛や創部に対して褥婦自身がセルフケアできるよう促していくことが必要である。褥婦が日常生活をスムーズに送ることができることで、褥婦自身の母親役割という新しい役割を遂行しやすくなる。

 

 

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外陰部の観察とケア

目的

外陰部の観察を経時的に行うことにより、外陰部の復古の促進や異常の早期発見に努める。

 

必要物品

未滅菌手袋、ビニール袋、掛け物、必要時潤滑剤。

 

観察項目

外陰部の観察:浮腫、腫脹、縫合している場合は縫合部の離開・発赤・腫脹の有無、縫合糸の牽引感・疼痛の有無、硬結・血腫の有無、痔核の有無

 

感染徴候の有無バイタルサイン血液検査データ

 

褥婦への問診:疼痛の有無・程度、悪寒や熱感の有無、離床後は排泄状況、排泄時の外陰部の清潔保持のセルフケア状態、日常生活動作への支障の有無。外陰部痛でも原因が異なるものもいくつかあるため、鑑別できるよう情報収集を行う(表1)。

 

表1 外陰部疼痛の鑑別

(横尾京子:助産師基礎教育テキスト2015年版、第6巻、産褥期のケア/新生児期・乳幼児期のケア、日本看護協会出版会、2015、北川眞理子、内山和美編:今日の助産−マタニティサイクルの助産診断・実践課程、改訂第3版、南江堂、2016、小林康江ら:ナーシンググラフィカ母性看護学②、母性看護の実践、メディカ出版、2019、平松裕司:フローチャートで学ぶ産褥期の異常徴候外陰部痛・肛門周囲部痛、ペリネイタルケア、27(6):572~576、2018をもとに作成)

 

図1 円座のつくり方

 

 

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痔核のケア

妊娠中、子宮増大による骨盤壁の静脈圧迫(図2)やプロゲステロンの影響により便秘になりやすく、痔核が発生しやすい。

 

図2 妊娠中の子宮増大による骨盤壁の静脈圧迫

 

それに加え、分娩により児頭の圧迫(図3)や努責により痔核が脱出しやすくなる。

 

図3 児頭娩出時の静脈圧迫

 

分娩後、脱出した痔核がうっ血して腫れ上がることもあり、腫れが引くまでは還納できないこともある。観察項目は表1参照、ここでは用手還納の方法について説明する。

 

用手還納の方法

分娩直後など腫脹や疼痛が強い場合は無理に還納せず、軟膏を塗布し、局所の冷罨法にて疼痛緩和をはかり、外陰部の清潔を保つ。分娩後は排便を我慢してしまうことが多いため、痔核を悪化させないために、必要性を説明し、排便コントロールが良好となるよう早めにケアを行っていく。

 

腫脹・疼痛軽減後は、シャワー浴や温罨法で循環促進させる。

 

手順

1手洗いをし、清潔な手で行う。

2看護者は未滅菌手袋を着用、褥婦本人が行う場合は手袋は着用しなくてもよい。

3痔核部分を肛門中心部に向かって押す(図4)。

 

図4 看護者による還納

 

4指とともに肛門内に軟膏をしっかり挿入する。

5肛門を引き締めながら、指をゆっくりと抜く。

 

 

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引用・参考文献

引用文献
1)横尾京子ら:ナーシンググラフィカ母性看護学①、母性看護実践の基本、メディカ出版、2016

参考文献
1)菊池恵理子ほか:妊婦さんへの内科治療―リスクと安全を考える、妊婦さんへの内科治療の考え方妊婦が内科医に尋ねる困りごとQ&A、診断と治療、105(10):1253~1258、2017
2)横尾京子:助産師基礎教育テキスト2015年版、第6巻、産褥期のケア/ 新生児期・乳幼児期のケア、日本看護協会出版会、2015
3)北川眞理子、内山和美編:今日の助産-マタニティサイクルの助産診断・実践課程、改訂第3版、南江堂、2016
4)荒木勤:最新産科学、正常編、文光堂、2016
5)我部山キヨ子ほか:助産学講座7、助産診断・技術学Ⅱ[2]、分娩期・産褥期、医学書院、2008
6)小林康江ら:ナーシンググラフィカ母性看護学②、母性看護の実践、メディカ出版、2019
7)横尾京子ら:ナーシンググラフィカ母性看護学①、母性看護実践の基本、メディカ出版、2016
8)平松裕司:フローチャートで学ぶ産褥期の異常徴候外陰部痛・肛門周囲部痛、ペリネイタルケア、27(6):572~576、2018
9)今中基晴ほか:どうして起こる? どうやって防ぐ? 妊娠・産褥期の生理から学ぶマイナートラブル予防法産褥復古に伴うマイナートラブル.ペリネイタルケア、26(6):594~600、2007
10)立岡弓子:新訂版周産期ケアマニュアル、第2版、サイオ出版、2015
11)中津雅子:回復は育児を快適にする-産褥復古への支援、痔核、ペリネイタルケア、25(3):226~227、2006

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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