分娩準備教育1 リラクセーション

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は分娩準備におけるリラクセーションについて解説します。

 

藤本 薫
保健医療技術学部看護学科教授

 

 

リラクセーションとは

リラクセーションとは、くつろぐこと、力を抜くこと、緊張をゆるめることなどである。陣痛中にリラックスできると、不安や痛みが減少し、分娩が順調に進行する。

 

分娩時におけるリラクセーションの目的

「不安—緊張—痛み」のサイクルを断つ。
・骨盤周囲の筋緊張を軽減させ、産道の抵抗を弱める。
・分娩期・産褥期の疲労を軽減する。

 

不安—緊張—痛み

緊張は痛みを引き起こし、痛みは不安を増強し、不安はさらに大きな緊張をまねく(リード理論)。不安が大きいと、息を止めがちとなり、腹筋が緊張し、収縮中の子宮を圧迫して、痛みの原因をつくる。また、間歇時のリラックスもうまくいかず、緊張しつづけると、子宮口は開きにくく、子宮の血液循環が抑制され、筋肉の痛みの増強や筋肉の疲労を招き、陣痛の収縮力が弱まってしまう。さらに、骨盤底の筋肉が引き締まると、会陰の伸展にも悪影響を及ぼすことがある。

 

リラクセーションの効果

・心身のストレスを軽減させ、脈拍血圧呼吸を整える。
・ 呼吸をスムーズに行うことで、胎児への酸素供給も行われやすくなる。
・筋緊張の軽減により、分娩が進行しやすくなる。
・分娩の安全・安楽につながる。

 

リラックスできているかのチェックポイント

・ 表情が穏やかで口が少し開き気味。
・ 腕をそっと床から持ち上げると、重くグニャグニャしている。
・ 脚を持ち上げると、重くだらんとしている。
・ ゆっくりとした呼吸をしている。

リラックスできているかのチェック

 

 

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リラクセーションの方法

1漸進的筋弛緩法

積極的に弛緩させたい筋肉に注意を集中し、随意的に筋肉を緊張させ、それから力を抜く。筋肉の緊張と弛緩を繰り返し行うことで身体のリラックスを導く方法である(以下、『文部科学省:第2章心のケア各論』より抜粋)。

 

方法

各部位の筋肉に対し、10秒間力を入れ緊張させ、15~20秒間脱力・弛緩する。各部位の筋肉が弛緩してくるので、弛緩した状態を体感・体得していく。

 

1両手:両腕を伸ばし、掌を上にして、親指を曲げて握り込む。10秒間力を入れ緊張させる。手をゆっくり広げ、膝の上において、15~20秒間脱力・弛緩する。筋肉が弛緩した状態を感じるよう教示する。

漸進的筋弛緩法 両手

 

2上腕:握った握り拳を肩に近づけ、曲った上腕全体に力を入れ10秒間緊張させ、その後15~20秒間脱力・弛緩する。

漸進的筋弛緩法 上腕

 

3:両肩を上げ、首をすぼめるように肩に力を入れる。

漸進的筋弛緩法 肩

 

4:口をすぼめ、顔全体を顔の中心に集めるように力を入れる。筋肉が弛緩した状態=口がぽかんとした状態。

漸進的筋弛緩法 顔

 

5:爪先まで足を伸ばし、足の下側の筋肉を緊張させる。足を伸ばし、爪先を上に曲げ、足の上側の筋肉を緊張させる。

漸進的筋弛緩法 足

 

2呼吸法

深くゆったりとした腹式呼吸を行う。腹式呼吸は副交感神経の活動を賦活させる効果がある。一般的に女性は胸式呼吸が多く、妊娠期より腹式呼吸の方法を身につけておくことで、分娩期のリラックスにも役立つ。

 

方法

腹式呼吸は、下腹部が膨らんだり、へこんだりするように呼吸する。臍を中心として左右の手をあて、腹部をへこます感じで、口からゆっくりと息を吐く。息を吸うときは下腹部を膨らませる気持ちで、から息を自然に吸う。寝る前や不安を感じるときなど、5~10分程度行うとよい(図1)。

 

図1 呼吸法

分娩期の呼吸法

 

分娩期の呼吸法

息を吐いたとき腹部がへこみ、息を吸ったときに腹部が膨らむ感じを腹部に当てた手で確認する。寝る前や不安を感じるときなど、5~10分程度行う

 

3音楽

気持ちが落ち着き心地よいと感じる音楽を聴くこともリラックスにつながる。音楽に意識を集中し、その心地よさに浸ってみる。妊娠期から親しんだ音楽を分娩期に聴くことで、分娩期のリラックスにも役立つ。

 

4アロマセラピー

アロマセラピーは、植物から抽出された精油の芳香成分がもつ薬理作用を利用した植物療法の1つである。妊娠・分娩・産褥期の女性のセルフケアとして利用される。妊娠中は胎児への影響を考慮し、精油の種類・量・使用方法に注意する。

 

方法

妊娠中期から末期にかけては、精油の希釈濃度は0.5~1.5%にする。植物油5mL+ 精油1滴(0.05mL)が1%濃度となる目安である。アロマポットなどでの芳香浴やコットンに直接滴下して持ち歩く方法もある。

 

妊娠期間中に使用することができ、リラクセーションに効果のある精油(正しい希釈度で使われるとき)には、ラベンダー、グレープフルーツ、レモンなどがある。

 

 

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引用・参考文献

1)我部山キヨ子、武谷雄二編:助産診断・技術学Ⅱ(1)妊娠期.助産学講座6、医学書院、2007
2)我部山キヨ子、武谷雄二編:助産診断・技術学Ⅱ(2)分娩期・産褥期.助産学講座7、医学書院、2007
3)村本淳子、高橋真理編:ウイメンズヘルスナーシング.周産期ナーシング、ヌーヴェルヒロカワ、2004
4)カール・ジョーンズ著、清水ルイーズ監訳、河合蘭訳:お産のイメジェリー.p.30~31、p.101~102、メディカ出版、1997
5)日本アロマセラピー学会看護研究会編:ナースのためのアロマセラピー、メディカ出版、2006

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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