乳房の変化とセルフケア

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は乳房の変化とセルフケアについて解説します。

 

立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授

 

乳房の変化

乳房は妊娠の成立後、往々に変化が現れ、妊娠中期には表1に示すように初乳の分泌が始まることが多い。

 

表1 乳房の変化

乳房の変化

 

目次に戻る

セルフケア

目的

産後の授乳に向けて、乳房や乳頭のトラブルを防ぎ、母乳分泌をはかり、児が吸着しやすい状態に整える。妊娠16週以降の胎盤が完成した時期より開始する。

 

1乳頭の手入れ

乳腺の開口や皮膚の鍛錬のために行う。

 

手順

1爪を短く切り、乳頭の先にクリームをつけて行う。

2親指、人指し指、中指の3本の指で、乳輪部から乳頭をつまみ、乳頭の先をつぶすように圧迫する(5〜10秒間程度、図1

3向きを変えて②を行う。片方の胸につき10回程度行う。

 

図1 乳頭の手入れ

乳頭の手入れ
画像を見る

 

POINT

①痛くなるまで、圧迫しない。
子宮の収縮が生じたら、すぐに止める。
③入浴中に実施すると、リラックスできて乳頭や乳輪部も柔軟になりやすい。

memo:乳頭マッサージと子宮収縮との関係

乳頭を刺激すると、脳下垂体後葉からオキシトシンが分泌され、子宮収縮が起こる。頻繁に子宮が収縮するようであれば、手入れは行わないようにする。

 

2乳カスの除去

妊娠中は、新陳代謝が活発になることから、乳頭にも垢がたまりやすくなる。また、中期になると初乳の分泌もみられ、次第に乳頭の先端に汚れが目立つようになる。乳頭の清潔保持と、垢による乾燥から生じる亀裂の予防のために行う。

 

手順

1コットンに、オイルをたっぷり含ませる。

 

POINT

オイルは、オリーブオイル、ワセリン、ベビーオイル、乳液、ハンドクリームなど、無香料のものであればどれでもよい。

 

2オイルを含んだコットンを乳頭に貼り、ラップでおおい皮膚をやわらかくして、垢を取り除きやすくする。

310分間ほどそのまま放置して、コットンで垢を拭き取る(図2)。

 

図2 乳カスの除去

乳カスの除去
画像を見る

 

4その後、入浴して汚れを石鹸で洗い流す。

 

3乳頭の矯正

陥没乳頭

陥没乳頭は、乳頭部の発育不全であり、妊婦の1%程度にみられる(図3)。妊娠中は、乳房が発育する時期でもあり、ケア次第で改善がみられる場合がある。

 

図3 中央陥没乳頭

中央陥没乳頭
画像を見る

 

乳頭吸引器

1976年にコッターマン(Cotterman)が考案した吸引器。ガラスおよびゴム製シールド・全面ゴム製シールドでできている(図4)。

 

図4 乳頭吸引器

乳頭吸引器
画像を見る

 

開始時期

妊娠中期以降

 

手順

1シールド部分を、乳輪に装着する。

2バルブを圧迫して、乳頭に軽い圧をかける。

3継続して行うが、3回に1回程度は、血流を維持するために乳頭組織を休ませるように心がける。

4数分ごとに乳房を変えて行う。

 

使用期間

乳頭の陥没がほとんどない場合には、2〜4週間以内に矯正されることが多い(図5)。程度の強い陥没乳頭の場合には、約3か月ほどのケアが必要となることが多い。

 

図5 中央陥没乳頭の乳頭吸引器使用後

中央陥没乳頭の乳頭吸引器使用後

 

画像を見る

 

CHECK

乳頭組織の亀裂を防ぐためにも、乳頭の血色を観察し、痛みが強くなるようであれば中止する。

 

 

目次に戻る

 


 

本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

> Amazonで見る   > 楽天で見る

 

 

[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

SNSシェア

看護ケアトップへ