経皮的大動脈弁形成術(PTAV)
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮的大動脈弁形成術(PTAV)について解説します。
古梶有紀
新東京病院看護部
〈目次〉
経皮的大動脈弁形成術(PTAV)はどんな治療?
経皮的大動脈弁形成術(percutaneous transcatheter aortic valvluloplasty;PTAV)は、大動脈弁狭窄症(AS)の治療法の1つです(表1)。PTAVはPTACとも呼ばれます。
PTAV:経皮的大動脈弁形成術、AS:大動脈弁狭窄症、TAVI:経カテーテル大動脈弁植込術
日本循環器学会:先天性心疾患,心臓大血管の構造的疾患(structural heart disease)に対するカテーテル治療のガイドライン 2014年版.(2020年1月閲覧)より転載
バルーンカテーテルを用いて狭窄した大動脈弁を拡張することで、大動脈弁狭窄の症状を改善することを目的として行われます。
両鼠径部を消毒し、穿刺部位に局所麻酔後、大腿の血管にカテーテルを挿入して治療を行います(図1)。苦痛の軽減のために鎮静薬を使用することがあります。
血管内に挿入したバルーンカテーテルで、狭窄した大動脈弁を拡張させ、大動脈弁狭窄症の症状の改善を図ります。
合併症には何がある?
経皮的バルーン大動脈弁形成術(PTAV)の合併症には、致死性不整脈の出現(心室頻拍、心室細動)、心タンポナーデ、ショック、血管損傷、カテーテル挿入部位からの出血や皮下血腫などがあります。
看護師は何に注意する?
意識レベル・呼吸状態の観察
鎮静薬を使用するため、意識レベル・呼吸状態の変化を確認します。
高頻拍ペーシング時には、血圧低下による意識レベルの変化に注意が必要です。
バイタルサインの確認
ガイドワイヤーによる穿孔や解離、不整脈の出現により、循環動態が急激に変化することがあります。
急変時の対応
合併症出現時に適切な対応が求められるため、治療時の観察や患者さんの訴えを常に注意深く観察します。
急激な循環動態や呼吸状態の変動をきたす場合は、補助循環装置や人工呼吸器が適応になります。
再出血や血腫の観察
大腿部の血管にカテーテルを挿入するため、術後は穿刺部からの出血や皮下血腫の観察を行います。
文献
- 1) 山名比呂美:特集 60問トライアル ハートナース検定.ハートナーシング 2016:29(12):40-41.
- 2)循環器用語ハンドブック:僧帽弁閉鎖不全[症].(2020.01.10アクセス)
- 3)日本循環器学会:弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版).(2019.09.01アクセス)
- 4)齋藤滋監修,高橋佐枝子,島袋朋子編:やさしくわかる心臓カテーテル 検査・治療・看護.照林社,東京,2014.
- 5)尾辻豊:心臓弁膜症・心内膜炎.医療情報科学研究所編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017:202-230.
- 6)長沼亨:弁膜症 実地医療で実践すべき診療のプロセス弁膜症 実地医家が知っておくべき現代の弁膜症 経カテーテル僧帽弁逆流症治療MitraClipとは.Medical Practice 2017;34(12):1999-2005.
- 7)高谷陽一,赤木禎治:はやわかり! Amplatzerの実際と必要な看護.ハートナーシング 2015;28(7):710-712.
- 8)日本メドトロニック株式会社:ペースメーカって、何ですか? 2013年12月改訂版.(2019.09.01アクセス)
- 9)吉川糧平,岡村篤徳,南口仁 他:第6章 心臓カテーテル治療.粟田政樹,田中一美編,はじめての心臓カテーテル看護 -カラービジュアルで見てわかる!.メディカ出版,大阪,2013:65-87.
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社