経皮的僧帽弁形成術
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮的僧帽弁形成術について解説します。
古梶有紀
新東京病院看護部
〈目次〉
経皮的僧帽弁形成術はどんな治療?
経皮的僧帽弁形成術は、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の治療法の1つです。
経静脈、経心房中隔アプローチをし、MitraClip®で僧帽弁の前尖と後尖を把持し、僧帽弁修復を行います(図1)※1。システム設置のために体位調整が重要です。
MitraClip®システムを使用した方法では、経食道エコーが必須であり、全身麻酔での治療となります。
経静脈アプローチにより、中隔穿刺針を用いて心房中隔穿刺を行います。左心房から僧帽弁へ挿入し、僧帽弁の前尖と後尖を把持し、クリップを留置します。
治療では抗凝固薬を投与し、活性凝固時間(ACT)は250秒以上を保持させます。そのため、1時間ごとのACT測定を行います。
合併症には何がある?
クリップの脱落、心タンポナーデ、医原性心房中隔欠損、僧帽弁狭窄、僧帽弁逆流の悪化、感染、穿刺部位からの再出血や皮下血腫に注意が必要です。
看護師は何に注意する?
心拍・血圧の観察
心房細動で頻脈となっているときは、心拍出量が減少するため、不整脈出現の有無の観察が大切です。
MitraClip®により、左心室から大動脈への血流が増えることから、左心室への後負荷が増加し、血圧が上昇するため、血圧の管理が重要となります。普段の血圧の把握が大切です。
活性凝固時間(ACT)の測定
治療中は抗凝固薬を投与し、活性凝固時間(ACT)は250秒以上を保持します。1時間ごとに測定をし、ACT値の把握と医師への報告を行うことが大切です。
全身麻酔に対する看護
治療は全身麻酔で行われるため、体温管理のための室温管理や保温を行います。また、MitraClip®システム設置のため、患者さんの下肢の除圧が重要となります。
麻酔覚醒時の意識レベルの変化や呼吸状態の観察が必要です。
再出血や血腫の観察
経静脈アプローチですが、挿入されるシステム径は大きいため、穿刺部を縫合します。治療部位からの出血や血腫の形成の観察が必要です。
[memo]
- ※1 経皮的僧帽弁形成術(MitraClip®)の適応(上へ戻る↑)
①僧帽弁閉鎖不全症(MR)3度または4度
②器質性僧帽弁逆流(DMR)、機能的僧帽弁逆流(FMR)
文献
- 1) 山名比呂美:特集 60問トライアル ハートナース検定.ハートナーシング 2016:29(12):40-41.
- 2)循環器用語ハンドブック:僧帽弁閉鎖不全[症].(2020.01.10アクセス)
- 3)日本循環器学会:弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版).(2019.09.01アクセス)
- 4)齋藤滋監修,高橋佐枝子,島袋朋子編:やさしくわかる心臓カテーテル 検査・治療・看護.照林社,東京,2014.
- 5)尾辻豊:心臓弁膜症・心内膜炎.医療情報科学研究所編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017:202-230.
- 6)長沼亨:弁膜症 実地医療で実践すべき診療のプロセス弁膜症 実地医家が知っておくべき現代の弁膜症 経カテーテル僧帽弁逆流症治療MitraClipとは.Medical Practice 2017;34(12):1999-2005.
- 7)高谷陽一,赤木禎治:はやわかり! Amplatzerの実際と必要な看護.ハートナーシング 2015;28(7):710-712.
- 8)日本メドトロニック株式会社:ペースメーカって、何ですか? 2013年12月改訂版.(2019.09.01アクセス)
- 9)吉川糧平,岡村篤徳,南口仁 他:第6章 心臓カテーテル治療.粟田政樹,田中一美編,はじめての心臓カテーテル看護 -カラービジュアルで見てわかる!.メディカ出版,大阪,2013:65-87.
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社