経皮的心房中隔欠損閉鎖術(ASO)
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は経皮的心房中隔欠損閉鎖術(ASO)について解説します。
古梶有紀
新東京病院看護部
〈目次〉
経皮的心房中隔欠損閉鎖術(ASO)はどんな治療?
経皮的心房中隔欠損閉鎖術(amplatzer septal occluder;ASO)は、心房中隔欠損症(ASD)の治療法の1つです(表1)。
形状記憶合金(ニチノール)のメッシュで構成された円状の閉鎖栓を挿入し、心房中隔欠損孔を閉鎖します(図1)。
治療には経食道心エコーが重要であるため、全身麻酔下で治療する施設が多いです。
経静脈アプローチで、欠損孔に閉鎖栓を挿入し、左心房→右心房の順に閉鎖栓を展開し、欠損孔を閉鎖します(図2)。
静脈穿刺のため、治療後の安静時間は短時間です。
入院期間は5日程度で、退院後は激しい運動は避ける必要がありますが、普段どおりの生活ができます。
合併症には何がある?
閉鎖栓の脱落・位置不正、心タンポナーデ、心穿孔、房室ブロック、心臓カテーテル法に伴う空気塞栓、感染、穿刺部位の出血・血腫などに注意が必要です。
看護師は何に注意する?
不整脈や塞栓症の観察
閉鎖栓の脱落は、治療中もしくは治療後早期に生じることが多いとされているため、心電図モニタリングが重要です。
空気塞栓によってさまざまな症状が出現するため、意識レベルの変化やバイタルサインの観察が大切です。
全身麻酔に対する看護
治療は全身麻酔で行われることが多いため、除圧や体温調節のための室温管理が必要となります。
麻酔覚醒後の意識レベルや呼吸状態の観察が重要です。
再出血や血腫の観察
治療前に抗血小板薬の内服が開始となり、術後には、さらに抗血小板薬が追加されます。穿刺部からの出血や皮下血腫の観察が大切です。
文献
- 1) 山名比呂美:特集 60問トライアル ハートナース検定.ハートナーシング 2016:29(12):40-41.
- 2)循環器用語ハンドブック:僧帽弁閉鎖不全[症].(2020.01.10アクセス)
- 3)日本循環器学会:弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版).(2019.09.01アクセス)
- 4)齋藤滋監修,高橋佐枝子,島袋朋子編:やさしくわかる心臓カテーテル 検査・治療・看護.照林社,東京,2014.
- 5)尾辻豊:心臓弁膜症・心内膜炎.医療情報科学研究所編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017:202-230.
- 6)長沼亨:弁膜症 実地医療で実践すべき診療のプロセス弁膜症 実地医家が知っておくべき現代の弁膜症 経カテーテル僧帽弁逆流症治療MitraClipとは.Medical Practice 2017;34(12):1999-2005.
- 7)高谷陽一,赤木禎治:はやわかり! Amplatzerの実際と必要な看護.ハートナーシング 2015;28(7):710-712.
- 8)日本メドトロニック株式会社:ペースメーカって、何ですか? 2013年12月改訂版.(2019.09.01アクセス)
- 9)吉川糧平,岡村篤徳,南口仁 他:第6章 心臓カテーテル治療.粟田政樹,田中一美編,はじめての心臓カテーテル看護 -カラービジュアルで見てわかる!.メディカ出版,大阪,2013:65-87.
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社