発作性上室性頻拍(PSVT)
【大好評】看護roo!オンラインセミナー
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は発作性上室性頻拍(PSVT)について解説します。
渡辺朋美
新東京病院看護部
〈目次〉
発作性上室性頻拍(PSVT)はどんな疾患?
発作性上室性頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia;PSVT)は、心房ないし房室結合部に興奮発生部位を有する頻拍です(100回/分以上)。動悸を起こす代表的な疾患です。
ほとんどの上室性頻拍※1は、興奮旋回(リエントリー)によって生じます。刺激伝導系以外に、心臓内で異常な興奮伝導回路が形成され、その回路内を興奮が回り続けて頻拍が発生します。興奮旋回は突然はじまり、突然終わります。
発作性上室性頻拍の代表的なものとして、房室回帰性頻拍(AVRT)と房室結節回帰性頻拍(AVNRT)の2つがあり、これらで発作性上室性頻拍の約90%を占めます(図1)。
図1AVRTとAVNRTの心電図波形
WPW症候群
WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群は、心房と心室を直接に連結する副伝導路(Kent[ケント]束)によって早期興奮が生じる病態です。房室回帰性頻拍の原因となります(図2)。
患者さんはどんな状態?
心拍数が極端に増加すると、血圧低下をきたし、眼前暗黒感や失神が起こることがあります。
頻拍が長時間持続すると、心不全を発症することもあります。
発作性上室性頻拍は、発作性心房細動や心房粗動との鑑別が必要になりますが、自覚症状からはそれを特定することはできません。そのため、発作時の心電図の記録がその後の治療に重要な役割を果たします。まず、バイタルサインの確認を行い、心電図の記録を行います。モニター心電図だけでなく、12誘導心電図の記録が必要です。
どんな治療を行う?
房室回帰性頻拍がない場合は経過観察とし、合併している場合(全体の約80%)は、動悸や胸痛を生じるため、迷走神経刺激(息をこらえてもらったり、冷水を飲んでもらうなど)、ATPまたはカルシウム拮抗薬を静注します。
発作性心房細動の合併(約20%)ではIa抗不整脈薬を静注し、無効の場合は電気的除細動を行います。発作性心房細動を合併すると、通常よりも速いwideQRSの頻拍となり、血行動態が破綻する恐れがあります。
再発予防として、高周波カテーテルアブレーションを行います。
[memo]
文献
- 1)百村伸一編:心臓病の治療と看護 (NURSING̶Cure and Care Series).南江堂,東京,2006.
- 2)医療情報科学研究所編:year note 2019.メディックメディア,東京,2018.
- 3)大八木秀和:まるごと図解 循環器疾患.照林社,東京,2013.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社