抗精神病薬で定型・非定型とは何ですか?|せん妄を鎮めるくすり

『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、抗精神病薬の定型・非定型について解説します。

 

抗精神病薬で定型・非定型とは何ですか?

 

抗精神病薬(メジャートランキライザー)のうち,従来から使用していたくすりを「定型」,副作用軽減のため開発されたくすりを「非定型」といいます.

 

〈目次〉

定型抗精神病薬の作用と特徴

抗精神病薬は,さまざまな内神経伝達物質のうち主にドパミンのD2受容体を遮断することにより精神病症状を緩和します.

 

定型抗精神病薬はドパミンD2受容体への親和性が非常に高く,抗精神病作用は強いものの錐体外路症状を主とする副作用が頻発することが問題となっていました.

 

非定型抗精神病薬の作用と特徴

そこでドパミンD2受容体への親和性が比較的低く,ほかの脳内神経伝達物質の受容体へも作用するという新たな性質を持つ非定型抗精神病薬が開発されました.

 

これらの薬物はそれぞれの性質の違いから,SDA(serotonin dopamine antagonist:セロトニン-ドパミン-アンタゴニスト),MARTA(multi acting receptor targeted antipsychotics,多元受容体標的化抗精神病薬),DSS(dopamine system stabilizer,ドパミン部分作動薬)の3つに分類されます.

 

せん妄の治療薬として用いられるものを表1に示します.

 

表1代表的な定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬

代表的な定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬

 

[各薬剤添付文書を参考に作成]

 

非定型薬は定型薬よりも錐体外路症状が生じにくい一方,食欲増進や体重増加,血糖値上昇,起立性低血圧といった新たな副作用が散見されることがあります.

 

「定型」,「非定型」以外の表現

抗精神病薬の名称分類として「定型」は「第1世代」または「従来型」,「非定型」は「第2世代」または「新規」と表記される場合があります.

 

トランキライザーとは

トランキライザーとは精神状態を安定させる性質をもつ薬物の総称です.

 

メジャートランキライザーは強力精神安定剤,マイナートランキライザー(睡眠薬・抗不安薬)は緩和精神安定剤という言葉で使われてきましたが,これらは作用の強弱によって分類されるものではなく,薬理作用が異なるものです.

 

メジャートランキライザーは,常用量では催眠作用や麻酔作用をもたず,かつ身体依存も精神依存も示さないという特徴をもちます1)

 


[文献]

  • 1)佐藤光源ほか編:統合失調症治療ガイドライン,p.114,医学書院,2004

 


[Profile]
築地茉莉子 (つきじ まりこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部

 

石井伊都子 (いしい いつこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行

 

“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100

 

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