鎮静薬を使うタイミング,解除のタイミングはどう考えればよいですか?|せん妄を鎮めるくすり
『せん妄のスタンダードケア Q&A100』より転載。
今回は、鎮静薬を使うタイミングについて解説します。
鎮静薬を使うタイミング,解除のタイミングはどう考えればよいですか?
興奮が強い場合は,患者さん自身や医療スタッフの安全を確保するため鎮静薬の使用が勧められます.せん妄の症状が収束して数日から1週間程度の継続投与を行った後,漸減後中止します.
〈目次〉
まずは非薬物治療の可能性をさぐる
せん妄の治療において,身体的・環境的要因の調節,誘因となっている薬剤の中止や減量により症状の改善が得られる場合も多いので,安易に薬剤投与を開始するのは避けましょう.
しかし,せん妄の原因の同定が困難であったり,重篤な身体疾患により原因の除去が困難な場合は,対処療法として薬物治療を行います.
激しい興奮で注射がむずかしい場合
興奮が激しい患者さんに対して鎮静薬を注射することは,患者さんに不快感を与えるだけでなく興奮をさらに悪化させしまうことがあります.また,医療スタッフにとっても危険が多いのでできる限り避けたほうがよいでしょう.
錠剤での服薬がむずかしい場合
内服で鎮静薬を投与する際,飲み込むまでに時間がかかったり,錠剤を吐き出してしまったり,口の中に隠して飲んだふりをするなど服薬を拒否することも少なくありません.
このような場合は,水がなくても内服できる液剤や口腔内崩壊錠が有効です(『メジャートランキライザーって何ですか?』参照).
せん妄の改善が得られたら
鎮静薬の長期使用は副作用発症のリスクがあるため,せん妄の改善が得られたら鎮静薬を漫然と使用し続けないことが大切です.
[文献]
- 日本総合病院精神医学会 薬物療法検討小委員会編:せん妄の治療指針,星和書店,2005
[Profile]
田邉 知己 (たなべ ともみ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部
石井伊都子 (いしい いつこ)
千葉大学医学部附属病院薬剤部
*所属は掲載時のものです。
本記事は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典]『“どうすればよいか?”に答える せん妄のスタンダードケア Q&A100』(編集)酒井郁子、渡邉博幸/2014年3月刊行