点滴ルートの固定方法【7】|困ったときの点滴固定方法4つのQ&A
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この連載では、点滴ルートの固定方法について多様なバリエーションとコツをご紹介します。
今回は、編集部に寄せられた疑問にQ&A方式でお答えします!
〔執筆〕 白石弓夏 看護師
〔監修〕 中谷佳子
聖マリアンナ医科大学病院
感染制御部 副師長
〔イラスト〕 かげ 看護師
今回ご紹介する方法は、通常の固定方法とは異なります。通常の固定方法や、ガイドラインの内容をおさえたい人はこちらの記事をご確認のうえで、Q&Aを読んでみてください!
Vol.7 困ったときの点滴固定方法4つのQ&A
【Q1】手術患者用や造影剤検査用のルートは通常の固定と同じですか?他の病院がどのようにやっているか気になります。(看護師Aさん、外科病棟勤務)
【A1】施設によって、手術や検査のときにだけ別の固定方法をとるところもあります。
手術や検査に使用する薬剤のなかには、血管外に漏れ出た場合のリスクが高いものもあり、細心の注意が必要です。
しかし、手術や検査の場合、麻酔薬や造影剤などの薬剤をワンショットで確実に血管内に入れなくてはならないことが多いために、一時的に固定を強化する場合があります。
そこで、ハードタイプ(粘着力の強い)のテープを使用し、外れにくい固定の方法を紹介します。
テープの長さは10㎝程度、まずは縦方向に切れ目を入れます。
それから切り目を入れた部分を交差して貼り付けます。
接続部のロック式コネクターの丸みに沿って固定することで、針が抜けにくく、接続部が緩みにくくなります。
上から透明ドレッシング材を貼ることもあります。
刺入部が見えにくくなることや、清潔操作が守れないことにより、長期間の固定には向いていません。
■注意点
・ハードタイプのテープ(粘着力が強いテープ)は皮膚への刺激が強いため、皮膚保護剤を塗って皮膚の保護を行うことで対処する方法もあります。
・この方法は、刺入部がテープによって見えづらくなります。
刺入部の腫れがわかりにくくなるというデメリットがあります。
そこで、血管内の点滴漏れがないか確認する方法として、痛みの有無や、「薬剤注入時に押子の抵抗が有るか」などで確認します。
・手術や検査のための一時的な固定方法なので、終わった段階で通常の固定方法に変更することを忘れないでください。
【A2】点滴ルートの刺入部を見えないようにしたり、固定を頑丈にする工夫があります。
認知症で認知機能が低下している場合、刺入部が気になることもあります。
そのため、病衣のなかにルートを通し、首元から出して、なるべく視界に入らないように工夫してみましょう。
長袖を着ていると、ルート類が視界に入らなくなります。
ケースバイケースではありますが、包帯やネット、アームカバーなどを使用し、刺入部に直接触れないようにすることで自己抜針を防げる方法もあります。
ただし、締め付けられて不快に感じる患者さんもいるため、注意が必要です。
■注意点
・点滴ルートが視界に入らないため、点滴がつながっていることに気づかず、点滴スタンドを忘れてベッドから離れてしまうという危険があります。
併せて、ベッド柵を増やしたり、離床センサーなどで工夫が必要です。
・包帯やネット、アームカバーで保護する場合には、刺入部の観察がしにくくなるため、頻回な観察が必要となります。
認知症の患者さんであれば、痛みなどを正確に伝えられない場合もあるため注意しましょう。
【Q3】毛深い患者さんの点滴ルート固定はどうしたらいいですか?(看護師Cさん、一般病棟勤務)
【A3】患者さんの了承を得て、毛を剃るか、ドレッシング材をはがすときの工夫ができます。
ドレッシング材を貼る位置の毛が多いと、ドレッシング材が浮いてしまう場合があります。
そのときには、患者さんに了承を得てから毛を剃ることもあります。
しかし、なかには剃りたくないという患者さんもいるので、その場合にははがすときに注意が必要です。
■注意点
はがすときのポイントは上に向かってはがすのではなく、横に平行に伸ばすようにはがします。
または、テープの剥離剤を使用しながらはがすことで刺激を減らすことができます。
【Q4】以前点滴ルートの固定をしたときに、テープやドレッシング材でかぶれてしまったような皮膚の弱い患者さんにはどのような固定方法がいいですか?(看護師Dさん、一般病棟勤務)
【A4】刺激の少ないテープを選択し、刺入部周囲には皮膚保護剤を使用します。
テープやドレッシング材でかぶれやすい患者さんの場合、最低限の固定に留めます。
固定力の強いゴム系テープではなく、アクリル系や不織布系、プラスチックテープ(カブレステープ U)などの刺激の少ないテープを使用します。
テープ固定部位には、あらかじめ皮膚保護剤を塗っておくことで皮膚の負担を軽減することができます。
また、テープやドレッシング材でかぶれやすい患者さんには、医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)にも注意が必要です。
点滴ルートによる長期間の皮膚の圧迫を防ぐため、Ω(オメガ)型にテープを固定する方法があります。
Ω型にテープを固定することで、皮膚が圧迫されにくくなるなどのメリットがあります。
点滴ルート固定だけではなく、経鼻栄養などの固定でも活用できる方法です。
■注意点
・スキンテア(皮膚裂傷)の主な発生状況はテープ剥離時とされていて、貼るときだけではなく、はがすときにも注意が必要です。
・横に平行に伸ばすようにはがすやり方は、皮膚の弱い患者さんだけではなく、どの患者さんに対しても徹底して行いましょう。
・はがすときには剥離剤を使用し、皮膚に負担がかからないように工夫する方法もあります。
また、刺激の少ないテープの場合には、ドレッシング材の固定に比べてはがれやすいため、ネットやカバーなどで補強することもできます。
[参考:粘着製品による皮膚トラブル対策]
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【監修者 プロフィール】
中谷 佳子(なかたに・よしこ)
1997年 聖マリアンナ医科大学病院 入職
2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)へ異動
2008年 感染管理認定看護師 取得
2008年~ 感染対策専従看護師
2013年 東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 修了(感染制御学修士)
2019年 聖マリアンナ医科大学病院 へ異動
2019年~ 感染制御部 副師長
2019年9月 特定行為研修修了
※最終更新日 2019/09/20
【イラスト:かげ】Twitter
総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。
編集/坂本綾子(看護roo!編集部)
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