腎瘻の観察ポイントは?|尿路ストーマの術後ケア

ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95』より転載。
今回は、腎瘻の観察ポイントについて解説します。

 

腎瘻の観察ポイントは?

 

腎瘻は一時的に造設されることの多い管理方法です.カテーテル挿入での管理を行い,腎瘻用のバルーンカテーテルを使用します.
一番注意することはカテーテルの抜去です.カテーテルが抜去されると持続的な排尿が阻害され,水腎症,腎盂腎炎をきたし腎機能障害につながります.持続的な排尿があるか,挿入されているカテーテルの長さは適切かにポイントをおいて観察します.

 

〈目次〉

解説

1カテーテルの固定

カテーテルの抜去を防止するためには,確実な固定が必要です.低刺激性の粘着剤で固定力のあるサージカルテープを使用します.皮膚に直接貼付することで皮膚障害をきたすリスクが高い場合は,板状皮膚保護剤を土台として貼付したり,皮膚被膜剤を使用します.カテーテルにテンションがかからず,必要以上にゆるみのない位置で固定します.テープ固定は,図1のように貼付すると,可動性が少なく確実な固定性が得られます.

 

図1テープ固定

テープ固定

 

腎瘻は,背部に挿入されており,固定はカテーテルが体動や臥床時に圧迫されたり邪魔にならない部位に固定することが望ましいといえます.また,必ず床用蓄尿袋もしくは脚用蓄尿袋(図2)に接続されていますので,どの体位をとっても確実にドレナージできる部位に固定することが必要です.

 

図2床用蓄尿袋(左)と脚用蓄尿袋(右)

床用蓄尿袋(左)と脚用蓄尿袋(右)

 

2日常の管理

日常の管理においては,定期的なカテーテル交換と必要に応じた洗浄を行います.

 

3カテーテル抜去への対応

カテーテルが抜去されてしまうと,カテーテル挿入路の狭窄や閉塞が急速に起こり,カテーテル挿入が困難となります.抜去されてしまった場合は,ただちに医師への報告が必要です.自宅で管理している場合では,夜間であってもすぐに来院するよう指導します.

 

知っておこう!脚用蓄尿袋についてのエピソード

「山菜とりに行って来た.久し振りだ.また行けるようになるとは思わなかったよ」.手術から数年を経た患者さんが,ストーマ外来で嬉しそうに言いました.術後はショックが大きく,「こんな身体になったら何もできない.もう死んだほうがましだ」と言っていた方でしたので嬉しい変化でした.
が,「この足につける袋便利だな,山歩く時はキャップ外して垂れ流しながら歩くと,あとでなげる(捨てる)必要ないしな」.あの,ちょっと待ってください.登山道に尿を流しながら歩くって….「あー,でも臭いをかいでテリトリーを犯されると思ったヒグマが襲ってきたらどうするの?」「そうか,それは考えなかったな.やめたほうがいいべか?」「やめたほうがいい」.無事,やめていただきました.でもヒグマにそんな習性あるのでしょうか?

 


[参考文献]

 

  • 1)日本ET/WOC協会編.ストーマケア エキスパートの実践と技術.照林社,2007.
  • 2)新島端夫監修,北川龍一ほか編.標準泌尿器科学.第3 版.医学書院,1989.
  • 3)ストーマリハビリテーション講習会実行委員会編.ストーマリハビリテーション 実践と理論.金原出版,2006.
  • 4)吉井忍.腎瘻・膀胱瘻の管理.月刊ナーシング.30(3),2010,50─1.

 


[Profile]
日野岡蘭子 ひのおか・らんこ
旭川医科大学病院看護部看護師長/皮膚・排泄ケア認定看護師

 

<医学監修>
岩田達也 いわた・たつや
旭川医科大学腎泌尿器外科学講座講師

 

柿崎秀宏 かきざき・ひでひろ
旭川医科大学腎泌尿器外科学講座教授

 

*所属は掲載時のものです。

 


本記事は株式会社メディカ出版の提供により掲載しています。

 

[出典]『ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!』(編著)菅井亜由美/2013年4月刊行

 

ストーマ術後ケア まるっとわかるQ&A95 病棟での困りごとがこれで解決!

 

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