点滴ルート固定「どうしても落ちないとき」のガーゼの使用や刺入の工夫【3】
この連載では、点滴ルートの固定方法について多様なバリエーションとコツをご紹介します。
Vol.3 「どうしても落ちないとき」のガーゼの使用や刺入の工夫
〔執筆〕 白石弓夏 看護師
〔監修〕 中谷佳子
聖マリアンナ医科大学病院
感染制御部 副師長
〔イラスト〕 かげ 看護師
点滴ルート固定で外せないポイント
今回の記事では「どうしても落ちないときのちょっとしたコツ」をお伝えしますが、その前にまずは点滴ルート固定において最低限必要な条件をおさえておきましょう。
- 針とラインがしっかり固定される
- ラインが閉塞しない
- 刺入部の観察ができる
基本の方法や、それぞれのメリット・デメリットについては、連載第1回、第2回も併せてご確認ください。
ガーゼの工夫【1】点滴がどうしても落ちないときに
点滴の針先が血管壁に当たっている、針が血管から抜けかかっているなどの理由で、点滴が落ちにくい場合、留置針の固定位置をガーゼで微調整する方法があります。
皮膚が厚い人の場合、刺入部に角度をつけると血管により届きやすくなります。
ガーゼを二つ折りにするといいでしょう。
反対に、皮膚がうすい人の場合では、針の角度が大きすぎると、血管が破れる可能性があります。
その場合には、2枚重ねになっているガーゼを半分にめくって1枚にして使用するといいでしょう。
しかし、ガーゼを挟むことで逆に固定が不安定になったり、血管外漏出になるデメリットもあります。
本来ならばガーゼを使用しなくても良好に滴下することが原則です。
ガーゼを使う方法は「“どうしても落ちない”ときの一つの方法」として、取り入れてみてください。
まずは、どうして滴下しないのか、その原因を探求することが大切です。
ガーゼの工夫【2】ドレッシング材を使えないときの緩衝材に
皮膚が弱い患者さん(高齢者など)の場合、接続部(刺入部の針と点滴ルートの接続部)が皮膚に長時間当たると圧迫による皮膚トラブル(褥瘡など)のリスクが高まります。
最近では、褥瘡予防のためのドレッシング材が別途準備されている病院・施設も増えてきていますが、コストの問題などで使用できるドレッシング材がない場合、ガーゼを代わりに挟む方法もあります。
なかでも、手背のように骨が出っ張っている部位では、接続部が骨に当たりやすいため、ガーゼがクッションの役割を果たします。(手背に固定する場合の基本はこちらをご参照ください「点滴ルートの固定方法|成人の手背に固定する場合」)
◆接続部がロックコネクターの場合は、さらに注意
刺入部の針と点滴ルートの接続部がロックコネクター(ネジのようにまわしてつけるタイプ)の場合、さらに注意が必要です。
ロックコネクターありのタイプは、特に接続部の凹凸が大きく、ゴツゴツしています。
このタイプは、接続部をネジのようにまわして締めるので、すぐには抜けず、接続部に圧がかかっても漏れにくいことが特徴です。検査や手術中、薬剤のワンショットを行う場合に、よく用いられるコネクターです。
この場合も、ドレッシング材などが使用できない場合の代替方法として、ガーゼを挟む方法があります。
しかしこれはあくまでも一時的な処置です。
ガーゼが当たった部分に汗がたまり、かゆくなる場合もあります。
皮膚の観察は、ガーゼの使用の有無にかかわらず入念に行うことが大切です。
【刺入の工夫】針を抜き気味に
蛇行している血管が多い患者さんでは、針を全部挿入すると血管壁に当たってしまい、滴下しなくなってしまうことがあります。
本来、このような場所には刺入しないのが原則。
「でも、どうしても」刺入しなければならないとき、ちょっと針を引き気味に固定すると、点滴が落ちるという場合もあります。
まずは安全に、確実に挿入して固定することが大前提ではありますが、なかなか血管がみつからない場合には、こうした1mm単位の微調整をしてみるのも一つの手です。
点滴ルートの固定には、何通りもの方法があります。
今回紹介した内容は、本来の挿入や固定方法ではできない場合のちょっとした工夫です。
それぞれのメリット・デメリット・禁忌を理解し、適切な方法を選択していきましょう。
次回は、血管内留置ガイドラインの内容を詳しくご紹介します。
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【監修者 プロフィール】
中谷 佳子(なかたに・よしこ)
1997年 聖マリアンナ医科大学病院 入職
2006年 川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)へ異動
2008年 感染管理認定看護師 取得
2008年~ 感染対策専従看護師
2013年 東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科 修了(感染制御学修士)
2019年 聖マリアンナ医科大学病院 へ異動
2019年~ 感染制御部 副師長
2019年9月 特定行為研修 修了
※最終更新日 2019/09/20
【イラスト:かげ】Twitter
総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。
編集/坂本綾子(看護roo!編集部)
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