注射針を患者によって使い分けるのはなぜ?|点滴静脈内注射

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は注射針の使い分けに関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

注射針を患者によって使い分けるのはなぜ?

注射針は、一度だけの点滴静脈内注射の場合は輸液針や翼状針(よくじょうしん)を用いますが、数時間から数日の間、継続的に輸液療法を行う場合は静脈内留置針(りゅうちしん)を用います。それより長い間静脈ルートを確保したい場合は、留置カテーテルを用います。

 

輸液針には、切れがよくて穿刺(せんし)を行いやすいという長所があります。しかし、体動すると血管を損傷しやすく、薬液が血管外に漏れやすいという欠点があるため、長時間の点滴静脈内注射には不向きです。

 

翼状針は、細い血管にも穿刺しやすく、体動があっても漏れにくく、皮膚への固定が容易に行えますが、針が短いため太った人では到達しにくいという欠点もあります。

 

静脈内留置針や留置カテーテルは、ともに輸液療法を一定期間必要とする患者に挿入されます。また、数時間の点滴静脈内注射でも、抗癌薬治療の場合は静脈内留置針を使います。

 

特に小児の場合は、点滴静脈内注射に使用できる血管ルートが少なく、しかも輸液治療が長期にわたって続くことが多いため、安定した血管ルートを確保するために静脈内留置針を用いることが多くなります。ただし、静脈炎や血管閉塞などを起こす危険性もありますので、穿刺部位の観察が欠かせません。

 

図1留置針と翼状針

 

留置針と翼状針の持ち方
翼状針は、ウイングを上に向けて折りたたみ、2本の指で持ちます。いずれにしても、安定感がよく、穿刺部がよく見えるように保持することが重要です。

 

memo静脈炎を起こしやすい薬剤

漏れると静脈炎を起こしやすい薬剤は、FOY®、KCL®、ベルジピン®ペニシリンG®、プレトパ®、イノバン®プロスタグランジン®、抗癌薬などです。こうした薬剤を用いる場合は、確かな手技ときめ細かな観察が重要です。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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