人工呼吸管理中の栄養評価の方法は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸管理中の栄養評価」に関するQ&Aです。
清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長
人工呼吸管理中の栄養評価の方法は?
血液データや身体計測などがありますが、病状の回復や患者の活気が出てくることが一番の栄養評価です。
〈目次〉
データによる栄養状態の評価
健常者であれば、アルブミンや総コレステロール、中性脂肪、コリンエステラーゼなどの血液データが栄養状態を反映している。
人工呼吸器を装着している患者の多くが、肺炎や外傷などの侵襲を抱えている。このような病態では、神経内分泌系の賦活化や炎症性サイトカインの産生が多くなっており、体内の代謝は亢進している。
身体計測にしても、全身の浮腫が見られる状態では評価が困難である。
人工呼管理吸中の栄養評価
人工呼吸管理中の適切な栄養評価は困難といえる。しかし、栄養評価は、栄養量の増量または減量を決定するうえで重要である。そこで、さまざまなデータを組み合わせて総合的に判断することになる。
例えば、侵襲による影響が比較的少ない総コレステロールや中性脂肪、コリンエステラーゼなどから入院前の栄養状態を推測する。
アルブミン値は炎症で上昇するCRP(急性相タンパク)の影響を受けるので、両方の推移を見る。
アルブミン値は半減期が14~20日と比較的前の栄養状態を反映しているため、半減期の短いプレアルブミン(トランスサイレチン)を参考にするのも1つの方法である。
人工呼吸器装着患者の最も妥当な栄養評価は、患者の活動性が増えること、疾病が回復へ向かうことだと考えられる。
[文献]
- (1)飯干泰彦,岡田正:腸粘膜萎縮の病態とその対策静脈栄養時にみられる腸粘膜の形態学的変化.JJPN1995;17:459-462.
- (2)氏家良人,海塚安郎,佐藤格夫,他:急性呼吸不全による人工呼吸患者の栄養管理ガイドライン2011年版.人工呼吸 2012;29:75-120.
- (3)McClave SA, Martindale RG, Vanek VW, et al. Guidelines for the Provision and Assessment of Nutrition Support Therapy in the Adult Critically Ill Patient: Society of Critical Care Medicine (SCCM)and AmericanSociety for Parenteral and Enteral Nutrition(ASPEN). JPEN 2009; 33: 277- 316.
- (4)Clinical Evaluation Research Unit:Practice Guideline 2013, http://www.criticalcarenutrition.com(2014年11月18日閲覧).
- (5)Singer P, Berger MM, van den Berghe G, et al. ESPEN Guidelines on Parenteral Nutrition: intensive care. Clin Nutr 2009:28:387-400.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社