経腸栄養は、間欠投与が適しているの?|人工呼吸管理中の栄養管理
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「経腸栄養の投与法」に関するQ&Aです。
清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長
経腸栄養は、間欠投与が適しているの?
間欠投与と持続投与のどちらかを選択するのに強い根拠はありませんが、重症患者では持続投与で管理するほうが安全と考えます。
〈目次〉
経腸栄養の投与法
経腸栄養の投与法には、2種類ある。
1間欠投与
通常、食事を摂取するように1日3~4回、1回200~400mLを、短時間から数時間かけて経腸栄養剤を投与する方法
2持続投与
24時間あるいは12時間など、一定時間、20~100mL/時の速度で持続的に経腸栄養を投与する方法
どちらを選択すべきかについては、死亡率や誤嚥性肺炎発症率に差はないため強い根拠はない。しかし、下痢については持続投与で発症率が低いとする報告2がある。
重症患者では少量ずつの持続投与が安全
入院前に健康問題がなかった患者は、食事を問題なく摂取していたことが多いため、消化管の吸収・排泄機能にそれほど問題はないと考えられる。しかし、全身状態が安定せず、入院後しばらく絶飲食の期間があるような患者は、消化管の吸収・排泄機能が低下していると考えたほうが無難である。
入院前から健康問題があった患者は、しばらく食欲不振が続いていたことが少なくない。このような患者には、消化管の吸収・排泄機能の低下を考慮した栄養管理が必要となる。
消化管の吸収・排泄機能の低下とは、小腸にある絨毛の機能が低下した状態でもある。絨毛の機能が破綻した状況で多量の栄養剤を投与すると、激しい下痢を生じる場合がある。
持続する激しい下痢に対しては、経腸栄養の増量も躊躇することになるため、消化管の吸収・排泄機能低下が予測される場合、少量ずつの持続投与が無難である。
[文献]
- (1)日本集中治療医学会ホームページ:人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版.http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2014年11月18日閲覧).
- (2)Hiebert JM, Brown A, Anderson RG, et al. Comparison of continuous vs intermittent tube feedings in adult burn patients. JPEN 1981; 5: 73- 75.
- (3)Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteral nutrition in critically ill adults. N Engl J Med 2011; 365: 506-517
- (4)Heidegger CP, Berger MM, Graf S, et al. Optimisation of energy provision with supplemental parenteral nutrition in critically ill patients: a randomised controlled clinical trial. Lancet 2013; 381: 385-393.
- (5)大柳治正 監修:やさしく学ぶための輸液・栄養の第一歩 第3版.大塚製薬工場,徳島,2012.
- (6)日本静脈経腸栄養学会 編:コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック.南江堂,東京,2008.
- (7)清水孝宏 編:エキスパートが本気で教える重症患者の栄養管理.総合医学社,東京,2013.
- (8)寺島秀夫:栄養療法 侵襲下の内因性エネルギー供給を考慮した理論的エネルギー投与法の提言.Intensivist 2011;3:423-433.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社