経腸栄養中の誤嚥を予防する体位とは?|人工呼吸管理中の栄養管理
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「経腸栄養中の誤嚥を予防する体位」に関するQ&Aです。
清水孝宏
那覇市立病院看護部看護師長
経腸栄養中の誤嚥を予防する体位とは?
誤嚥予防には、35~40度以上の頭位挙上を維持したセミファーラー位以上の体位をとることが重要です。
〈目次〉
仰臥位で管理しない
栄養管理中かどうかを問わず、人工呼吸管理中の誤嚥を防ぐための体位は、35~40度以上の頭位挙上を維持したセミファーラー位である。
仰臥位で管理した場合、口側への胃内容物の逆流が起こり、これが気道へ侵入すると誤嚥を起こす。
誤嚥が必ず肺炎につながるわけではないが、肺炎発症の機会を極力減らすためには、体位管理が重要である。
1人工呼吸中は30度以上の頭位挙上が基本
日本集中治療学会が2010年に改訂した「人工呼吸器関連肺炎予防バンドル(通称VAPバンドル)」1がある(『VAP予防にはなにをすればいいの?』)。これは5つのバンドル(束)を併せたケアを行うことで、VAP(人工呼吸器関連肺炎)*を予防する戦略である。
VAPバンドルのなかにも、人工呼吸管理中の患者は仰臥位で管理せず、30度以上頭位を上げることが明記されている。
上記のほかにも、頭位挙上の重要性に言及したガイドラインは多い(表1)。
2頭位挙上困難時の対応
実際の臨床では治療上の体位の制約から35~40度以上の頭位挙上を維持することが困難な場面も少なくない。例えば、大腿部から太いカテーテルを挿入して管理しなければならない血液浄化療法などである。
このような場合でも、ベッドに傾斜をつけるなどの工夫をし、完全な仰臥位を避けることが重要である(図1)。
- VAP(ventilator-associated pneumonia):人工呼吸器関連肺炎
[文献]
- (1)日本集中治療医学会ホームページ:人工呼吸器関連肺炎予防バンドル2010改訂版.http://www.jsicm.org/pdf/2010VAP.pdf(2014年11月18日閲覧).
- (2)Hiebert JM, Brown A, Anderson RG, et al. Comparison of continuous vs intermittent tube feedings in adult burn patients. JPEN 1981; 5: 73- 75.
- (3)Casaer MP, Mesotten D, Hermans G, et al. Early versus late parenteral nutrition in critically ill adults. N Engl J Med 2011; 365: 506-517
- (4)Heidegger CP, Berger MM, Graf S, et al. Optimisation of energy provision with supplemental parenteral nutrition in critically ill patients: a randomised controlled clinical trial. Lancet 2013; 381: 385-393.
- (5)大柳治正 監修:やさしく学ぶための輸液・栄養の第一歩 第3版.大塚製薬工場,徳島,2012.
- (6)日本静脈経腸栄養学会 編:コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック.南江堂,東京,2008.
- (7)清水孝宏 編:エキスパートが本気で教える重症患者の栄養管理.総合医学社,東京,2013.
- (8)寺島秀夫:栄養療法 侵襲下の内因性エネルギー供給を考慮した理論的エネルギー投与法の提言.Intensivist 2011;3:423-433.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社