呼吸リハビリテーションにおける運動の際の管理は、どうしたらいいの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「呼吸リハビリテーションにおける運動管理」に関するQ&Aです。
藤田吾郎
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
運動療法の管理には、プログラムマネジメント(適切な運動処方に基づいて実施する)と、リスクマネジメント(その運動が適切に行われているかをモニタリングする)の両面が求められます。
〈目次〉
運動療法の管理
人工呼吸器管理下であっても運動療法は可能であり、適切な運動処方に基づいたプログラムのマネジメントが必要である。
運動処方の原則はFITT(フィット)で表される(表1)。
F | Frequency | 運動の頻度 |
I | Intensity | 運動の強度 |
T | Time | 運動の持続時間 |
T | Type | 運動の種類 |
例えば、歩行や自転車エルゴメーターなどの有酸素運動、またはレジスタンス運動という種類のエクササイズを、週に何回、どのくらいの強さで、どのくらいの時間行うのかといったプログラムを立案する必要がある。
こうした運動プログラムが、安全かつ効果的に行われているかをモニタリングするリスクマネジメントも必要である。
臨床場面での運動の管理
経皮的酸素飽和度モニタ(パルスオキシメータ)やモニター心電図などの機器を利用した監視下運動療法が運動の管理として重要である。
Borg(ボルグ)CR-10(Category-Ratio10)スケール(表2)による呼吸困難や下肢の疲労感などの自覚症状の評価、さらに呼吸パターンの変化を観察することによって得られる情報も多い。
0 | 感じない | nothing at all |
0.5 | 非常に弱い | very very weak |
1 | やや弱い | very weak |
2 | 弱い | weak |
3 | ||
4 | 多少強い | somewhat strong |
5 | 強い | strong |
6 | ||
7 | とても強い | very strong |
8 | ||
9 | ||
10 | 非常に強い | very very strong |
呼吸リハビリテーションマニュアル1では、運動療法の中止基準を表3のように定めている。
呼吸困難 | Borg CR-10スケール 7~9 |
その他の自覚症状 | 胸痛、動悸、疲労、めまい、ふらつき、チアノーゼなど |
心拍数 | 年齢別最大心拍数の85%に達したとき(肺性心を伴うCOPDでは65~70%)、不変ないし減少したとき |
呼吸回数 | 毎分30回以上 |
血圧 | 高度に収縮期血圧が下降したり、拡張期血圧が上昇したとき |
SpO2 | 90%未満になったとき |
しかし、人工呼吸器管理下の患者の運動療法においては、必ずしもこれらの基準が臨床所見としてふさわしくない状況がある。
そうした場合には、個々の身体的状態に合わせ、各施設・部門で定めた基準に従って管理を行うべきである。
[文献]
- (1)日本呼吸ケアリハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会,日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会・呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会,日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会編 : 呼吸リハビリテーションマニュアル─患者教育の考え方と実践-. 照林社, 東京, 2007.
- (2)AAHPERD. Physical Education for Lifelong Fitness: The Physical Best Teacher’s Guide, Champaign:Human Kinetics;1999:78-79.
- (3)Borg G. Psychophysical scaling with applications in physical work and the perception of exertion. Scand J Work Environ Health1990;16(suppl 1): 55-58.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社