呼吸リハビリテーションにおける自己管理と家族管理の指導は、どうしたらいいの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「呼吸リハビリテーションにおける自己管理と家族管理の指導」に関するQ&Aです。
藤田吾郎
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
呼吸リハビリテーションにおける自己管理と家族管理の指導は、どうしたらいいの?
人工呼吸器装着患者の呼吸リハビリテーションでは、患者自身が日々の管理を行うセルフマネジメント能力を身につけるとともに、家族指導による包括的な管理が重要です。
〈目次〉
呼吸リハビリテーションにおける指導
患者自身のセルフマネジメント能力を高め、家族にも教育を行うことで、受動的なかかわりではなく、ともに疾患管理に取り組む包括的な呼吸リハビリテーションが可能となる。
指導の内容
呼吸リハビリテーションにおける患者教育として必要な項目を表1に示す。これらの内容は、家族に対しても教育する必要ある1。
患者教育として必要な項目
運動療法については、適切な運動方法の教育とともに、運動の中止基準についても十分に説明する必要がある(『呼吸リハビリテーションにおける運動の際の管理は、どうしたらいいの?』)。
効果的な指導とは
自己管理能力の向上により、運動療法の効果を最大限に得るためには、自己効力感(セルフ・エフィカシー)を高めるような指導が効果的である。
自己効力感は、ある結果を生み出すために必要な行動を、どの程度うまく行うことができるかという個人の確信を意味する。すなわち、ある行動を起こす前に、その個人が感じる「達成可能感」や、自分がやりたいと思っていることの実現可能性に関する知識ともいえる。
自己効力感は、呼吸リハビリテーションを習慣化する段階で必要とされる、重要な心理的要因である。
自己効力感を高めるためには、表2の点を意識して、患者と家族に指導を行う。
遂行行動の達成 |
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代理的経験 |
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言語的説得 |
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生理的・情動的状態 |
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自己管理や家族管理が十分に行われないのは、患者自身や家族が悪いのではなく、医療者側の指導が十分でないという意識を常にもたなければならない。
[文献]
- (1)日本呼吸ケアリハビリテーション学会呼吸リハビリテーション委員会,日本呼吸器学会ガイドライン施行管理委員会,日本リハビリテーション医学会診療ガイドライン委員会・呼吸リハビリテーションガイドライン策定委員会,日本理学療法士協会呼吸リハビリテーションガイドライン作成委員会編 : 呼吸リハビリテーションマニュアル─患者教育の考え方と実践-. 照林社, 東京, 2007.
- (2)AAHPERD. Physical Education for Lifelong Fitness: The Physical Best Teacher’s Guide, Champaign:Human Kinetics;1999:78-79.
- (3)Borg G. Psychophysical scaling with applications in physical work and the perception of exertion. Scand J Work Environ Health1990;16(suppl 1): 55-58.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社