咳嗽の強化には、どんなことをしたらいいの?|呼吸リハビリテーション

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「咳嗽の強化」に関するQ&Aです。

 

下地大輔
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科

 

咳嗽の強化には、どんなことをしたらいいの?

 

臥位より座位のほうが嗽に有利に働くとの報告もありますが、方法、頻度、回数などは確立されていません。臨床では、患者の特性に応じて深呼吸や発声練習、呼気筋の強化などが用いられる場合があります。

 

〈目次〉

咳嗽強化の方法

咳嗽は、第1相:刺激による咳の誘発(誘発)、第2相:深い吸気(肺気量)、第3相:声帯を閉じた圧迫(圧縮)、第4相:呼気筋による爆発的な呼出(呼出)の4相に分類される

 

咳嗽の低下は、上記の4相のいずれか、もしくは、それぞれの要因が関連して起こっていると考える。しかし、現時点では、咳嗽強化として最も効果的な方法は確立されていない。

 

咳嗽は、ピークフローメータを用いたカフピークフローの測定によって評価可能で、先行研究では再現性や妥当性についても検討されている。この測定方法は、簡便に実施可能で、自主トレーニングやカフピークフロー値を読み取ることでフィードバック効果も期待できる点がメリットである。

 

咳嗽の強化については未知数であるが、姿勢との関連性が検討されており、臥位よりも座位に近づくにつれてカフピークフロー値が向上することが報告されている

 

実施時の注意点

気管挿管されている人工呼吸器患者は、気管挿管チューブが気管まで入っているため、咳嗽の構成要素である「声門閉鎖」ができないことを忘れてはいけない。

 

喀痰を目的とした咳嗽を頻回に促すと、患者の疲労を蓄積してしまうことに注意する。

 

咳嗽による自己喀痰の獲得も重要であるが、離床による抗重力姿勢をとることで気管にある線毛運動を活性化し、気道内分泌物を口腔側へと移動することや、痰の粘稠性を下げるようなアプローチとの併用が必要である。

 

Column痰の性状から、何がわかる?

痰とは、上気道粘膜や気管支粘膜からの分泌物と、肺実質内からの滲出液が混ざったもののことである。健常成人の気道内には、1日あたり約60~100mLの痰(分泌物)が存在するとされるが、再吸収・蒸発・無意識な嚥下が行われるため、痰とし て口腔外に排出されることは、ほとんどない。しかし、何らかの原因によって気道内に分泌物が増加すると、咳反射によって咳嗽が生じ、分泌物が口腔外に排出される。

 

痰の性状の観察は、患者状態を把握するうえで、非常に有用である。

 

例えば、粘稠度が高い痰(吸引時に吸引カテーテルにこびりつくなど)であれば、加湿不足や脱水が疑われる。この場合は、皮膚の乾燥や口腔・舌の観察などを行い、脱水の有無をアセスメントする必要がある。

 

また、重症の肺水腫では、ピンク色の泡沫状・水様の痰が見られる。このような痰が吸引された場合は、重症呼吸・循環不全の可能性を疑って対応することが求められる。

 

[Profile]
道又元裕
杏林大学医学部付属病院看護部長

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

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