呼吸リハビリテーションにおけるトレーニングには、どんなものがあるの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「呼吸リハビリテーションにおけるトレーニング」に関するQ&Aです。
下地大輔
東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
呼吸リハビリテーションにおけるトレーニングには、どんなものがあるの?
床上で行う廃用予防を目的とした筋力トレーニング、ADLトレーニング、運動療法の3つが主となります。
〈目次〉
呼吸リハビリテーションにおけるトレーニング
人工呼吸器装着患者に対するトレーニングは、患者の状態や病期を判断して行う。
トレーニングの構成4
呼吸循環動態が安定していない患者に対しては、排痰支援や体位変換などの合併症予防やベッド上での四肢の自動・他動運動を行い、コンディショニングの維持に努める。
徐々に急性期を脱してきたころには、日常生活の自立をめざし、食事や排泄、整容動作、起居動作、歩行などのADLトレーニングを行う。
可能であれば、全身持久力トレーニングも低負荷から開始し、運動強度や時間の延長を図りながら行う。
人工呼吸器装着患者へのトレーニングの効果
2008年のLevineらの報告では、19~56時間人工呼吸器管理をされている患者の約55%に、呼吸主要筋である横隔膜の萎縮を認めるとしている5。
人工呼吸器離脱困難患者に対する吸気筋力トレーニングの効果をコントロール群との比較で検討したところ、吸気筋力トレーニングにおいて人工呼吸器離脱率が高いことが報告されている5。
運動療法は、筋力トレーニングと全身持久力トレーニングからなる。
筋力トレーニングは、バランスボールの使用や自重でのトレーニングを行うことにより、ベッド上で行うことが可能である(図1)。また、床上でのエルゴメーター運動が可能な機種が出てきており、人工呼吸器患者に対する効果が期待される。
[文献]
- (1)Scanlan CL, et al. Bronchial hygiene Therapy Fundamental of Respiratory Care(Wilikins RL), Mosby, St.Louis, 2003: 883-910.
- (2)山川梨絵, 横山仁志, 武市尚也, 他 : Cough-Peak-Flow測定の信頼性と妥当性. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌2012; 22(1): 110-114.
- (3)山科吉弘, 田中一行, 増田崇, 他 : 姿勢が咳の最大流量(Cough Peak Flow)に与える影響. バイオフィリアリハビリテーション研究 2012; 7: 1-5.
- (4)日本呼吸ケア・リハビリテーション学会, 日本呼吸器学会, 日本リハビリテーション医学会,日本理学療法士協会編:呼吸リハビリテーションマニュアル─運動療法 第2版.照林社,東京,2012.
- (5)Levine S, Nguyen T, Taylor N, et al. Rapid disuse atrophy of diaphragm fibers in mechanically ventilated humans. N Engl J Med 2008; 358: 1327- 1335.
- (6)Martin AD, Smith BK, Davenport PD, et al. Ispiratory muscle strength training improves weaning outcome in failure to wean patients: a randomized trial. Crit Care 2011; 15: R84.
- (7)Marquis K, Debiqare R, Lacasse Y, et al. Midthigh muscle cross-sectional area is better predictor of mortality than body mass index in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med 2002; 166: 809.
- (8)厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班 : 栄養評価法.呼吸不全-診断と治療のためのガイドライン.メディカルビュー社, 大阪, 1996: 64-73.
- (9)Stapleton RD, Jones N, Heyland DK. Feeding critically ill patients: what is the optimal amount of energy?. Crit Care Med 2007; 35: S535-540.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社