口腔ケアを行うのはなぜ?|清潔援助

 

『看護技術のなぜ?ガイドブック』より転載。

 

今回は口腔ケアに関するQ&Aです。

 

大川美千代
群馬県立県民健康科学大学看護学部准教授

 

口腔ケアを行うのはなぜ?

口腔ケアの第一の目的は、健康な人と同様に齲歯や歯周病、口臭などを防ぐためです。

 

気分が爽快になることによって、食欲を促すことにもつながります。また、看護者にとっては、患者の口腔内を観察するよい機会になります。

 

しかし、臨床現場における口腔ケアの第一の意義は、自浄作用が衰えた患者の口腔内の保清にあります。

 

特に、経口的に栄養摂取ができない患者の場合は唾液分泌が少なくなって自浄作用が弱まり、口腔内に細菌が繁殖して感染の危険性も高まります。経口摂取ができる場合でも、機能的な運動障害などによって適切なブラッシングができずに口腔内の清潔が保てなくなると、同様に自浄作用は衰えます。

 

口腔内に細菌が増殖することで患者が受ける最大のダメージは全身感染症です。特に嚥下障害がある患者は、誤嚥をすることで細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を起こす危険性が高くなります。

 

人工呼吸器装着患者、気管切開をしている患者も、細菌がチューブに沿って肺に侵入する危険性が高いといえます。心疾患患者の場合は、垢の細菌が血液内に流入して一過性の菌血症を起こし、感染性心内膜炎を起こす危険性もあります。

 

MEMO自浄作用

口腔内では、咀嚼運動によって唾液の分泌が促され、さらに食べ物との接触も加わって細菌が口腔内粘膜や舌、歯の表面などに付着・増殖するのを防いでいます。これを、口腔内の自浄作用といいます。
しかし、経口摂取ができない患者は唾液の分泌が少なくなり、自浄作用が弱くなってきます。経口摂取ができる場合でも、口腔内が不潔になると自浄作用が発揮されなくなります。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護技術のなぜ?ガイドブック』 (監修)大川美千代/2016年3月刊行/ サイオ出版

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