もっと知りたい!PEGケアに関する6つのギモン|PEGケアQ&A
『病院から在宅までPEG(胃瘻)ケアの最新技術』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はPEGケアに関するギモンについて説明します。
岡田晋吾
北美原クリニック理事長
倉 敏郎
町立長沼病院院長
〈目次〉
- Jett-PEGって何ですか?
- PTEGについて教えてください。
- 腸瘻やPEG-Jで、気をつけなくてはならないことはありますか?
- リハビリテーションを行う場合、PEG部には、どの程度まで負荷をかけられますか?
- PEGの地域連携パスについて教えてください。
- 皮下輸液について教えてください。
Jett-PEGって何ですか?
X線透視下で一体型カテーテルを空腸に留置する方法です。内視鏡を使わないので、患者にかかる負担を軽減することができます。
胃食道逆流や誤嚥性肺炎が起こる場合、栄養カテーテルの先端を空腸に留置します。一般的には、胃瘻の瘻孔を利用するPEJ(percutaneous endoscopic jejunostomy:経胃瘻内視鏡的空腸瘻)が行われます。
以前はPEGカテーテルと細径の空腸カテーテルが分かれていましたが、一体型カテーテル(図1)の登場で、より実施しやすくなりました。
このカテーテルはダブルルーメン式(小腸用・胃用の2つのルーメンをもつ)ですから、空腸への栄養剤投与と胃内部の減圧が同時にできます。一体型であるため先端まで内腔が太く、閉塞も起きにくいです。
このカテーテルは、細経内視鏡を用いて挿入することもできますが、ガイドワイヤーをうまく用いれば、内視鏡を用いずにX線透視下で留置することができます。この方法をJジェットett-PEG(jejuno-tubing through PEG catheter)法と呼びます。内視鏡によって患者にかかる負担を回避できるのが利点です。
(岡田晋吾)
PTEGについて教えてください。
PTEG(percutaneous trans-esophageal gastro-tubing:経皮経食道胃管挿入術)は、大石英人氏が中心となり日本で開発された手技で、さまざまな理由でPEGが造設できない患者に経腸栄養ルートを造設する方法です。内視鏡を使わず、非破裂性バルーンと超音波だけで経皮的に頸部食道瘻を作成できます。
現在は保険請求できないのが難点ですが、胃切除後や腹水のある患者には、とても有意義な方法ですので、近い将来、保険請求ができるようになると思います。
(岡田晋吾)
腸瘻やPEG-Jで、気をつけなくてはならないことはありますか?
ダンピング症候群や下痢、チューブ閉塞やチューブの抜けに気を配ります。
PEG-Jや腸瘻の管理では、PEGとは異なるいくつかの注意点があります。
ダンピング症候群と下痢に注意
栄養剤を空腸に直接投与するため、ダンピング症候群や下痢の発生に注意が必要です。経腸栄養ポンプを用いた長時間投与が望ましいですが、難しいことも多いと思います。
まずは少量から投与を始め、100~120mL/時程度で合併症が出ないかを注意深く観察していきましょう。
チューブ閉塞に要注意
PEGカテーテルと違って内腔が細いので、チューブ閉塞に気をつけなければなりません。閉塞すると入れ換えが必要になることが多く、患者や家族に負担がかかります。
特に、薬剤投与による閉塞が多いので気をつけます。ダブルルーメンタイプのカテーテルでは、薬剤は胃用ルーメンから投与したほうがよいでしょう。腸瘻では、閉塞しにくい薬剤を選択したり、簡易懸濁法を用いたほうがよいでしょう。
チューブの位置の確認も重要
チューブの位置がずれていないか確認することも重要です。空腸まで入れたチューブが抜けてしまうと再挿入は難しいため、日ごろからの確認が重要です。
PEG-Jでは、バルーン水も忘れずに確認しましょう。
(岡田晋吾)
リハビリテーションを行う場合、PEG部には、どの程度まで負荷をかけられますか?
通常のリハビリテーションであれば、制限はありません。実施する運動に合わせ、使いやすいPEGキットを選択しましょう。
どんどんリハビリテーションしてください。通常のリハビリテーションであれば、荷重制限はありません。
胃瘻があっても、ゲートボールをしている人や、競艇選手、フルタイムで会社に通っている人もいます。自分が胃瘻をつけながら手術にかかわっている外科医もいます。
その運動に合わせて、一番使いやすいPEGキットを選択してあげましょう。
(倉敏郎/岡田晋吾)
PEGの地域連携パスについて教えてください。
造設側と管理側がスムーズに連携するためのツールです。使用する栄養剤やPEGカテーテルを標準化することで、ケアも標準化しやすくなります。
PEGはつくったら終わりではなく、つくった後の管理がとても大切です。
今までは、急性期病院で造設されたあと、管理する介護施設や在宅のスタッフに十分な情報が伝わらないことも多くありました。また、交換の時期や場所が知らされず、患者や家族に負担をかけることも多くありました。
最近では、造設側と管理側が定期的に勉強会を行い、PEGカテーテルや栄養剤を地域で標準化しようという動きが出てきています。そのためのツールとして地域連携パスが各地域で作られています。地域連携パスを公開している地域もあるので、参考にしてください。
ただ、地域連携パスはあくまでツールです。定期的な勉強会や検討会など、互いの顔を見て行うネットワーク作りが大切です。
(岡田晋吾)
皮下輸液について教えてください。
細胞外輸液や5%ブドウ糖液を皮下から投与する方法です。
在宅医療の現場では、自然な経過で患者を見ていくことが多くあります。このような場合はPEGやTPNポートを造設せず、何もしないか、末梢輸液のみを行います。末梢輸液が行えない場合は皮下輸液を選択します。日本緩和医療学会の『終末期患者に対する輸液治療のガイドライン』でも「末梢静脈、中心静脈を確保することが具術的に困難である、危険性が高い、または患者の負担になる場合には水分補給を目的として皮下輸液を行う」ことが推奨されています。
皮下輸液の実際
細胞外輸液製剤や5%ブドウ糖液などを100mL/時以下で投与します。500~1000mL程度であれば、1日で吸収されます。
穿刺部位は、皮下脂肪があり、浮腫がない胸部や腹部・大腿上部とし、24Gのサーフロ針もしくは翼状針を用いて行います。
栄養投与ではないので、十分な説明が必要です。
(岡田晋吾)
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2010照林社
[出典] 『PEG(胃瘻)ケアの最新技術』 (監修)岡田晋吾/2010年2月刊行/ 照林社