気管切開による合併症を予防するためには?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「気管切開による合併症予防」に関するQ&Aです。
塚原大輔
日本看護協会看護研修学校認定看護師教育課程特定行為研修担当教員
気管切開による合併症を予防するためには?
特に出血、気道閉塞、事故抜去に注意が必要です。出血予防は気管切開チューブ入れ替え時のケア、気道閉塞予防はケアに伴うずれ、事故抜去予防は確実な固定がポイントです。
〈目次〉
気管切開の合併症
気管切開の合併症を表1に示す。
気管切開チューブ | 回路接続外れ、事故抜去、狭窄・閉塞、位置異常 |
気管切開孔 | 出血、狭窄、感染、皮下気腫、潰瘍 |
カフ | カフ漏れ、カフ破裂、気管粘膜の潰瘍・圧迫壊死、気管拡張、気管食道瘻、大血管からの出血、誤嚥、サイレントアスピレーション |
声帯・喉頭の機能不全 | 失声、誤嚥の助長、生理的PEEPの消失 |
その他 | 肺炎、縦隔気腫、気胸、皮下気腫 |
出血
術中操作、術後の気管粘膜の炎症性病変、潰瘍・肉芽からの出血が多く、吸引の刺激やカテーテルによる損傷が誘因となる。
気管切開チューブの入れ替え時、肉芽を傷つけて出血する場合もあるため注意する。
長期間気管切開チューブが留置された例では、まれに気管と気管腕頭動脈が接する部位に気管切開チューブやカフが当たり、気管と動脈に瘻孔を生じ大出血をきたす危険がある。
気道閉塞
血液や気道分泌物により気管切開チューブ内腔が閉塞する。また、患者の体動や体位変換、人工呼吸器回路の重みにより気管切開チューブの位置がずれて、肉芽や気管壁に接触することにより、閉塞することもある。
Tピースやトラキマスクを使用する場合、回路の呼気側の閉塞や、気管切開チューブがずれてマスクに当たり閉塞する危険もある。
事故抜去
特に気管切開術後2週間は、気管壁と皮膚の間の組織に確実な通路ができていないため、事故抜去による閉塞から窒息する危険性がある。
無理に再挿入すると、チューブが皮下に迷走し換気困難をきたす危険性がある。
術後はカニューレバンドを使用した確実な固定と、皮膚と気管切開チューブの縫合が必要になる。
[文献]
- (1)片岡英幸,北野博也:気管切開術の基本手技と合併症
- (2)水野勇司:さまざまな事故や合併症に注意が必要〜気管切開の管理〜.難病と在宅ケア2011;17:31-34
- (3)3学会合同呼吸療法認定士認定委員会:3学会合同呼吸療法認定士 第18回認定講習会テキスト.2013:297.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社