手術創はいつまで 創部の被覆が必要?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「手術創の被膜」に関するQ&Aです。

 

今崎美香
大阪市立総合医療センター医療安全管理部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

手術創はいつまで創部の被覆が必要?

 

基本的に術後48時間以降は必ずしも被覆する必要はありません。

 

〈目次〉

 

被膜する必要が無い根拠は?

手術により一期的に閉鎖した切開創は、術後48時間で上皮化します。手術創の治癒過程は、(表1)のようになります。48時間以降、創部を覆うべきかどうか、また被覆なしでシャワーや入浴を行う適切な時期について明確なエビデンスはありません。しかし、上皮化した創部は基本的にドレッシングによる被覆は必要なく、抜糸や抜鈎まで開放で問題ありません。ただし、傷が衣服でこすれて痛みが生じたり、その他の理由で患者が保護を望む場合には創部を覆ってもかまいません。

 

表1手術創の治療過程

 

①一次治癒創 手術縫合創は、感染などの治癒を傷害する因子が生じなければ上皮の離開はほとん どなく、最小の肉芽形成、瘢痕形成で治癒する。
②二次治療創 感染の存在などによって上皮の離開が自然に生じて開放創となることもあるが、膿 瘍のドレナージのために意図的に創を開放することもある。この開放創のまま管理 すると増殖期の肉芽形成に続いて組織の収縮が生じ、瘢痕組織として創が変形して 治癒する。
③三次治療創
(遷延一次創)
感染が制御され、肉芽形成された時点で再び開放創を閉鎖すると、その後の治癒過 程が短縮され、瘢痕が少なく変形の少ない創となって治癒する。

小山勇:創傷治癒のメカニズムと創傷管理:周術期感染管理テキスト,日本外科感染症学会,診断と治療社,東京, 2012:12. より引用

 

術後48時間以降も感染に注意

ドレッシング材で被覆する場合もしない場合も、発赤などの感染徴候を見逃さないよう皮膚の観察は重要です(図1)。術後創の治癒遅延の原因は、患者の基礎疾患(糖尿病、肝疾患、低栄養)などの全身的因子もありますが、局所的因子の1つとして「感染」が挙げられます。

 

図1手術創の観察

手術創の観察

手術創の観察

 

術後は、発汗や血液汚染などの有機物で皮膚は汚れやすい状態となっています。皮膚の清潔を保つためにも、術後48時間以降は微温湯や温めた生理食塩水などによる物理的な洗浄は効果的です。

 

また、手術部位感染(surgical site infection:SSI)を予防するためには、手指衛生の遵守は欠かせません。患者の治療やケアにかかわる医師や看護師は、手指衛生の遵守をはじめとする標準予防策(standard precautions:SP)の徹底を行うことが重要です。患者のベッドサイドで創部処置を行う際は、サージカルマスク、手袋、エプロン、ゴーグルなどの個人防護具(personal protective equipment:PPE)を適切に使用することを推奨します。

 


[文献]

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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