術後の腹帯、T字帯は必要?

『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「腹帯・T字帯」に関するQ&Aです。

 

久保健太郎
大阪市立総合医療センター看護部
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長

 

術後の腹帯、T字帯は必要?

 

必ずしも使用しなければならない明確な根拠はありません。

 

〈目次〉

 

現在、腹帯・T字帯の使用を推奨するエビデンスは“ない”

多くの病院で腹部手術後に「腹帯」「T字帯」を使用することが慣習になっていると思います。この腹帯、T字帯は一体何のために使用されているのでしょうか。

 

著者が調べた限りでは、看護学の教科書には術後に腹帯、T字帯を使用する目的の記載はありませんでした。唯一、『看護学事典』1には「腹帯:手術後に使用される場合には、患部の被覆や圧迫、固定・牽引などの目的で使用される」と記載がありましたが、T字帯の目的の記載はありませんでした。

 

ではこの腹帯、T字帯に科学的根拠(エビデンス)はあるのでしょうか。今回、文献レビューを行いエビデンスを検討した結果、腹部手術後において、腹帯、T字帯が有用とするエビデンスはありませんでした(表1)。

 

表1腹帯、T字体のエビデンス

腹帯、T字体のエビデンス

 

もちろんエビデンスがないからといって、不要であるとは一概にはいいきれません。しかし、腹帯の場合、疼痛や離床の促進だけを目的とした使用は効果が否定されているため、控えるべきでしょう。

 

ほかにも腹腔鏡手術の場合、創部やドレーン挿入部にフィルムドレッシング材を使用している場合、事故抜去の危険性が低い場合などでは、腹帯は不要であると思います。

 

ディスポーザブルパンツを使用する施設もある

一方、T字帯は、医療者の管理のしやすさなどから使用されている場合が多いと思います。最近ではT字帯の代わりにディスポーザブルパンツを導入している施設もあり、羞恥心や動きやすさの面でも患者にメリットはあるのではないかと思います。

 

慣習にとらわれず、もう一度必要性を検討していく必要があるでしょう。

 

「腹帯はしなくてもいいですよ」と言っても、やめない患者さんって多いですよね。

 

「安心する」「ないと頼りない」という患者さんは多いね。術後5年、10年たってもやめない患者さんもいるぐらいです。

 


[文献]

  • (1)見藤隆子,小玉香津子,菱沼典子 総編集:看護学事典.日本看護協会出版会.東京,2003:588.
  • (2)北村公美,乾万記子,中万里子,他:開腹手術患者における腹帯の使用は有用ではない.消化器外科ナーシング 2009;14:117-120.
  • (3)藤村紘子,杉野裕美,下野加奈,他:開腹術後における腹帯着用の効果の検討.山口大学医学部附属病院看護部研究論文集 2007;82:48-51.
  • (4)見藤隆子,小玉香津子,菱沼典子 総編集:看護学事典.日本看護協会出版会.東京,2003:588.
  • (5)北村公美,乾万記子,中万里子,他:開腹手術患者における腹帯の使用は有用ではない.消化器外科ナーシング 2009;14:117-120.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社

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