ABVD療法(化学療法のポイント)/悪性リンパ腫
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、悪性リンパ腫の患者さんに使用する抗がん剤「ABVD療法(ドキソルビシン+ブレオマイシン+ビンブラスチン+ダカルバジン療法)」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『ABVD療法(看護・ケアのポイント)/悪性リンパ腫』
西森久和
(岡山大学病院 血液・腫瘍内科)
〈目次〉
- ABVD療法はホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)の患者さんに行う抗がん剤治療
- ABVD療法で使用する薬剤
- ABVD療法のレジメン
- ABVD療法で使用する薬剤の投与方法
- ABVD療法の代表的な副作用
- ABVD療法の治療成績
ABVD療法はホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)の患者さんに行う抗がん剤治療
ABVD(エービーブイディー)療法とは、悪性リンパ腫のうちホジキンリンパ腫の患者さんに対して行う、最も代表的な抗がん剤治療です。
ABVD療法を行う際には、投与時の血管外漏出や血管痛、投与1日目の嘔気や嘔吐と、1~2週間程度で起こる骨髄抑制(特に、白血球・好中球減少)などが患者さんに起こっていないか、注意しましょう。
ABVD療法のポイントA
- ドキソルビシンの血管外漏出、ダカルバジンの血管痛に注意して投与しよう!
ABVD療法で使用する薬剤
ABVD療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1ABVD療法で使用する薬剤
ABVD療法のレジメン
ドキソルビシン(アドリアシン)、ブレオマイシン(ブレオ)、ビンブラスチン(エクザール)、ダカルバジン(ダカルバジン)は、1、15日目(Day 1、15)に投与し、2~14、16~28日目は休薬します(表2)。
表2ABVD療法のレジメン
ABVD療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3ABVD療法の投与方法
上記を1コースとして、1コース投与後は4週間ごとに同様のものを投与し、これを6~8サイクル繰り返します。つまり、2コース目は、29日目から始まります。
ABVD療法の代表的な副作用
ABVD療法の代表的な副作用は、嘔気や嘔吐、骨髄抑制(特に白血球・好中球減少)、発熱性好中球減少症(FN)、便秘、末梢神経障害、脱毛などがあります。
急に起こる副作用は、嘔気、嘔吐、便秘、などです。
遅れて起こる副作用は、骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、末梢神経障害、脱毛などです。
また、ブレオマイシン(ブレオ)の投与によって急に起こる悪寒や発熱と、遅れて起こる肺障害には注意が必要です。
また、ダカルバジン(ダカルバジン)は、投与時に血管痛を伴うことが多いです。
ABVD療法のポイントB
- 初日の嘔気、嘔吐の程度を把握して、次コース以降の制吐剤を検討しよう!
ABVD療法のポイントC
- 感染管理はもちろん、ブレオマイシンによる肺障害にも注意しよう!
ABVD療法の治療成績
ABVD療法の治療成績は5年生存率80%強と非常に高いものです。また、治癒する患者さんも多く、効果的な治療法と言えます。
しかし、副作用が原因で死亡する方や、ABVD療法がきっかけとなって、別のがん(治療関連白血病など)が発症する患者さんもいるため、注意が必要です。
- 第2話:『ABVD療法(看護・ケアのポイント)/悪性リンパ腫』
- ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る
[文 献]
- (1)Carde P, Karrasch M, Fortpied C, et al. Eight Cycles of ABVD Versus Four Cycles of BEACOPPescalated Plus Four Cycles of BEACOPPbaseline in Stage III to IV, International Prognostic Score ≥ 3, High-Risk Hodgkin Lymphoma: First Results of the Phase III EORTC 20012 Intergroup Trial. J Clin Oncol 2016; 34(17): 2028-36. (2017/5/16アクセス)
- (2)日本癌治療学会. がん診療ガイドライン 制吐療法. (2017/5/16アクセス)
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編集・執筆]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。