パクリタキセル療法・ドセタキセル療法(化学療法のポイント)/乳がん

 

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、乳がん(乳癌)の患者さんに使用する抗がん剤「パクリタキセル療法/ドセタキセル療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『パクリタキセル療法・ドセタキセル療法(看護・ケアのポイント)/乳がん

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法

 

元木崇之
(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:患者さんが感じる副作用には、アレルギー反応があります。初回投与時は、心電図モニターやパルスオキシメーター(SpO2モニター)を装着し、患者さんの状態を確認しよう。
  • ポイントB:末梢神経障害や手足症候群(ハンドフットシンドローム)が起こることがあるので、手足の保湿を勧めよう。
  • ポイントC:ドセタキセル療法は、1週間頃に、白血球減少が起こる可能性が高いので、発熱の有無・発熱が起こった際の対応について確認しよう。

 

〈目次〉

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法は乳がんの患者さんに行う抗がん剤治療

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法とは、乳がんの患者さんに対して行う標準的な抗がん剤治療です。術前化学療法・術後補助化学療法いずれにも使用されています。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法を行う際には、投与時にアレルギー反応が生じる場合があるので、初回投与時はモニター管理が必要です。

 

製剤によってはアルコール成分が含まれていますので、患者さんにアルコールアレルギーがないか確認をしましょう。また投与後初期に起こる全身倦怠感や、晩期に起こる末梢神経障害、ドセタキセル療法の際に1週間頃に起こる白血球・好中球減少が主な副作用ですので、患者さんの状態をチェックしましょう。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法で使用する薬剤

パクリタキセル療法の場合

パクリタキセル療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1パクリタキセル療法で使用する薬剤

パクリタキセル療法で使用する薬剤

 

ドセタキセル療法の場合

ドセタキセル療法で使用する薬剤は、表2のとおりです。

 

 

表2ドセタキセル療法で使用する薬剤

ドセタキセル療法で使用する薬剤

 

(写真提供:サノフィ株式会社)

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法のレジメン

パクリタキセル療法のレジメン

パクリタキセル療法では、パクリタキセル(タキソール)を、1日目(Day 1)に投与し、2~7日目は休薬します(表3)。

 

 

表3パクリタキセル療法のレジメン

パクリタキセル療法のレジメン

 

ドセタキセル療法のレジメン

ドセタキセル療法では、ドセタキセル(タキソテール)を、1日目に投与し、2~21日目は休薬します(表4)。

 

 

表4ドセタキセル療法のレジメン

ドセタキセル療法のレジメン

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法で使用する薬剤の投与方法

パクリタキセル療法の投与方法(表5

 

表5パクリタキセル療法の投与方法

パクリタキセル療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

上記を1コースとし、一般的に12コース投与します。つまり、8日目に2コース目が開始となります。

 

ドセタキセル療法の投与方法(表6

 

表6ドセタキセル療法の投与方法

ドセタキセル療法の投与方法

 

生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

上記を1コースとし、一般的に4コース投与します。つまり、22日目に2コース目が開始となります。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法の代表的な副作用

パクリタキセル療法の副作用

パクリタキセル療法の代表的な副作用は、アレルギー反応、脱毛、骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、下痢・便秘、末梢神経障害などがあります。アレルギー反応は投与中に出現し、強さによっては致死的になる場合もあるので、投与中には十分な注意が必要です。症状出現時には、直ちに緊急対応が必要となります。

 

遅れて出てくる副作用として、末梢神経障害の出現があります。長期間続く場合もありますので、症状の継続的な観察が必要となります。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法のポイントA

  • 患者さんが感じる副作用には、アレルギー反応があります。初回投与時は、心電図モニターやパルスオキシメーター(SpO2モニター)を装着し、患者さんの状態を確認しよう。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法のポイントB

  • 末梢神経障害やハンドフットシンドロームが起こることがあるので、手足の保湿を勧めよう。

 

memo手足の皮膚細胞が障害されるハンドフットシンドローム

ハンドフットシンドロームとは、手足症候群とも呼ばれます。手足症候群は、手や足の皮膚の細胞が障害され、しびれ・発赤・ヒリヒリ感・水ぶくれ・色素沈着などが起こる現象です。

 

ドセタキセル療法の副作用

ドセタキセル療法の代表的な副作用は、アレルギー反応、脱毛、骨髄抑制、発熱性好中球減少症、下痢・便秘、浮腫などがあります。パクリタキセル療法と同様に、アレルギー反応には十分な注意が必要となります。

 

遅れて出てくる副作用として、浮腫の出現がありますので、体重の変化に注意してください。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法のポイントC

  • ドセタキセル療法は、1週間頃に、白血球減少が起こる可能性が高いので、発熱の有無・発熱が起こった際の対応について確認しよう。

 

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法の治療成績

パクリタキセル療法/ドセタキセル療法は、術前術後補助療法としてAC療法に追加することにより、手術標本でがんが消失する病理学的完全奏効(pCR)の確率が13%上昇しました2)

 

また、この治療によりpCRとなった症例は、術後8年の生存率がそのほかの症例に比べて約60%改善しています3)

 

[関連記事]
  • 第2話:『パクリタキセル療法・ドセタキセル療法(看護・ケアのポイント)/乳がん』
  • ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る

 


 


[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
元木崇之
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

SNSシェア