AC療法(看護・ケアのポイント)/乳がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、乳がん(乳癌)の患者さんに使用する抗がん剤「AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド療法)」について、看護・ケアのポイントについて紹介します。

 

第1話:『AC療法(化学療法のポイント)/乳がん

AC療法(ドキソルビシン+シクロホスファミド療法)

 

元木崇之
(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)

 

AC療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:患者さんが感じる強い副作用は、嘔気です。自宅での嘔気の有無、経口摂取の状況を確認しよう。
  • ポイントB:ドキソルビシンの副作用として心機能低下があるので、高齢者に使用する場合は注意しよう。
  • ポイントC:2週間頃に、白血球減少が起こる可能性が高いので、発熱の有無・発熱が起こった際の対応について確認しよう。

 

〈目次〉

 

必ず覚えて! AC療法の注意点

投与前の注意点

投与前には患者さんの嘔気・嘔吐の有無や、発熱の有無、排便状況などを確認しましょう。また、足のむくみ・動悸・息切れなど、心不全症状がないか確認しましょう。

 

AC療法のポイントA

  • 患者さんが感じる強い副作用は、嘔気です。自宅での嘔気の有無、経口摂取の状況を確認しよう。

 

AC療法のポイントB

  • ドキソルビシンの副作用として心機能低下があるので、高齢者に使用する場合は注意しよう。

 

投与中の注意点

アレルギー症状は比較的少ない薬剤ですが、投与中のバイタル変化には注意しましょう。投与中に血管痛が生じる場合があるので、確認しましょう。

 

血管外漏出が起こる可能性があるので、痛みや違和感がないか注意深く観察しましょう。

 

もし、血管外漏出を発見した場合には、直ちに薬剤の投与を中止し、できるだけルート内の薬剤を吸引した後、医師に報告し対応を仰ぎましょう。

 

投与後の注意点

投与当日より嘔気が生じる場合があります。嘔気の出現に注意しましょう。頓服の制吐剤の使用方法も確認しておきましょう。

 

AC療法時の申し送り時のポイント

アレルギー反応は比較的少ない薬剤ですが、もし認められた場合は必ず伝えましょう。また投与中に血管痛が生じる場合がありますので、もし認められた場合は伝えましょう。

 

血管痛があった場合の申し送り例

ドキソルビシン(アドリアシン)投与開始10分で血管痛が認められました。速やかに薬剤の投与を中止し、外漏出がないことを確認しました。その後、生理食塩水でフラッシュし、残りの薬剤を投与しました。
血管炎発症の可能性がありますので、前回投与部位の血管の観察をお願いします。

 

AC療法時の看護記録に記載すべきこと

来院時の嘔気・嘔吐の有無、食事摂取の状況、発熱の有無、下肢のむくみ・動悸息切れの状況などを記載しましょう。

 

前回投与時の血管の色調変化や痛みの状況についても記載するとよいでしょう。

 

患者ケア・看護ケアはココを押さえる

AC療法では、白血球減少や発熱性好中球減少症(FN)、嘔気・嘔吐の発生頻度が比較的高く起こります。患者さんの来院時には、日常の体温の経過・経口摂取の状況について確認しましょう。

 

また時折、便秘や下痢といった消化器症状も見受けられます。これらについても確認するようにしましょう。可能であれば、「抗がん剤日誌」のような手帳をお渡しし、日々の症状・熱型を記載してもらうとよいでしょう。

 

発熱性好中球減少症(FN)の発症時にはどのように対応したらよいのか、医療側と患者さんの意思疎通を取っておくことも重要です。

 

どのような時には受診をした方がよいのか、夜間休日の連絡先も確認しておくとよいでしょう。自宅近くで日常的な症状を相談できる「かかりつけ医」の有無についても、確認しておきましょう。

 

AC療法のポイントC

  • 2週間頃に、白血球減少が起こる可能性が高いので、発熱の有無・発熱が起こった際の対応について確認しよう。

 

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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
元木崇之
岡山大学病院 乳腺・内分泌外科

 


*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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