FOLFOXIRI療法(化学療法のポイント)/大腸がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、大腸がん(大腸癌)の患者さんに使用する抗がん剤「FOLFOXIRI(フォルフォキシリ)療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『FOLFOXIRI療法(看護・ケアのポイント)/大腸がん』
神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
〈目次〉
- FOLFOXIRI療法は大腸がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- FOLFOXIRI療法で使用する薬剤
- FOLFOXIRI療法のレジメン
- FOLFOXIRI療法で使用する薬剤の投与方法
- FOLFOXIRI療法の代表的な副作用
- FOLFOXIRI療法の治療成績
FOLFOXIRI療法は大腸がんの患者さんに行う抗がん剤治療
FOLFOXIRI療法は、進行・再発の大腸がんに対する抗がん剤治療として使用される薬剤です。
FOLFOXIRI療法は、フルオロウラシル(5-FU)、レボホリナート(アイソボリン)、オキサリプラチン(エルプラット)、イリノテカン(カンプト)を組み合わせた治療法の名前です。フルオロウラシル(5-FU)は、46時間持続投与するため、一般的には中心静脈ポート(CVポート)を留置して外来で行います(図1)。
memoCVポートのメリットとデメリット
【メリット】
・点滴漏れや血管障害が起こりにくい
・末梢血管よりは穿刺が簡単で、患者さんに与える苦痛だけでなく、穿刺する医療者側のストレスも軽くなる
・長時間の投与でもポンプを使用すれば、自宅で持続投与できる
【デメリット】
・人工物のため、感染などの合併症が起こる可能性がある
・身体に対する負担は軽いものだが、手術が必要
FOLFOXIRI療法で使用する薬剤
FOLFOXIRI療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1FOLFOXIRI療法で使用する薬剤
FOLFOXIRI療法のレジメン
1日目(Day 1)に、フルオロウラシル(5-FU:持続点滴)、イリノテカン(カンプト)、オキサリプラチン(エルプラット)、レボホリナート(アイソボリン)を投与します。フルオロウラシル(5-FU:持続点滴)は、46時間かけて(2日目)投与します(表2)。
表2FOLFOXIRI療法のレジメン
FOLFOXIRI療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
FOLFOXIRI療法で使用する薬剤の量は、海外の試験で使用された方法「Falcone」1)と、日本人のデータから抗がん剤が減量された「改定型」があります。
表3日本人向けに改定されたFOLFOXIRI療法の投与方法
FOLFOXIRI療法の代表的な副作用
FOLFOXIRI療法は、大腸がんで使用される主な抗がん剤をすべて使用したレジメンです。そのため、副作用として、強い骨髄抑制や食欲不振が生じる可能性があります。Grade 3、4の好中球減少の発生率は50%と報告されており注意が必要です。
特徴的な副作用としては、アレルギー反応や末梢神経障害、嘔気・嘔吐や下痢、腹痛などの消化器系の副作用、脱毛、末梢血管から投与する場合には投与時の血管痛などがあります。特に、オキサリプラチンによる末梢神経障害はほぼ必発です。程度が悪くなる前に休薬の必要が出るため、患者さんに説明しておきしましょう。また、オキサリプラチンによるアレルギー反応は、初回に起こるとは限らず、いつ起こるかわかりません。常に、患者さんの状態に注意しましょう。
急に起こる副作用には、アレルギー反応や下痢(早期型)、腹痛、嘔気・嘔吐、血管痛などがあります。
遅れて出てくる副作用には、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛や下痢(遅発型)などがあります。
FOLFOXIRI療法のポイントA
- オキサリプラチンを長期間使用することで末梢神経障害はほぼ必発です!
FOLFOXIRI療法のポイントB
- オキサリプラチンによるアレルギー反応が生じることがあります。常に注意しておきましょう。
FOLFOXIRI療法のポイントC
- 骨髄抑制の頻度が高く、特に好中球減少には注意しましょう。
FOLFOXIRI療法の治療成績
FOLFOXIRI療法は、おもに分子標的治療薬のベバシズマブ(アバスチン)を併用して使用されることが多く、腫瘍が縮小する可能性は約65%と報告されています。
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[文 献]
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。