ニボルマブ療法(化学療法のポイント)/肺がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、肺がん(肺癌)の患者さんに使用する抗がん剤「ニボルマブ療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『ニボルマブ療法(看護・ケアのポイント)/肺がん』
久保寿夫
(岡山大学病院 腫瘍センター)
- ポイントA:インフュージョンリアクション(infusion reaction)に注意しよう!
- ポイントB:さまざまな免疫関連有害事象に注意しよう!
- ポイントC:有害事象出現のサインを逃さないよう、注意深く観察しよう!
〈目次〉
- ニボルマブ療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
- ニボルマブ療法で使用する薬剤
- ニボルマブ療法のレジメン
- ニボルマブ療法で使用する薬剤の投与方法
- ニボルマブ療法の代表的な副作用
- ニボルマブ療法の治療成績
ニボルマブ療法は肺がんの患者さんに行う抗がん剤治療
ニボルマブ療法は、肺がんのうち非小細胞肺がんの患者さんに対するセカンドライン(二次治療)以降に用いることができる新しい治療レジメンです。
ニボルマブ療法で使用する薬剤
ニボルマブ療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1ニボルマブ療法で使用する薬剤
ニボルマブ療法のレジメン
1日目(Day1)に、ニボルマブ(オプジーボ)を投与し、2~13日目は休薬します(表2)。
表2ニボルマブ療法のレジメン
ニボルマブ療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3ニボルマブ療法の投与方法
ニボルマブ療法の代表的な副作用
重要な副作用の一つとして、infusion reactionがあります。初回投与時とは限らず、2回目以降の点滴のときにも起こり得るので注意が必要です。
memoinfusion reactionはアレルギー反応に似た合併症
infusion reaction(インフュージョン リアクション)とは、抗がん剤を使用する際に起こる合併症の一つです。発生する症状は、アレルギー反応に似ています。
また、ニボルマブ(オプジーボ)は、免疫チェックポイント阻害薬という、がん細胞に対する「患者さん自身」の免疫反応を活性化することで、効果を発揮する新しい薬剤です。
この患者さん自身の免疫反応が、がん細胞以外の正常なところに影響することで生じる副作用を「免疫関連有害事象」と言います。これは、今までの抗がん薬治療では未経験のもののため、ニボルマブ(オプジーボ)を使用する際は注意が必要です。
主な免疫関連有害事象には、重症筋無力症、筋炎、大腸炎、1型糖尿病、甲状腺機能障害、間質性肺疾患、肝機能障害、神経障害など、さまざまな症状が起こる可能性があります。
memo重篤化する劇症1型糖尿病には要注意!
PD-L1抗体であるニボルマブは副作用として、1型糖尿病のなかでも劇症1型糖尿病を発症することがあります。劇症1型糖尿病は、1週間前後でケトアシドーシスに陥るなど、急激に重篤化し、適切な処置をしなければ死に至る危険性があります。
急激な血糖値の上昇や、口渇、多飲、多尿、体重減少、全身倦怠感、意識障害など、糖尿病の症状が出現すれば、必ず主治医に連絡するように患者さんへ伝えてください。
ニボルマブ療法のポイントA
- ニボルマブは、インフュージョンリアクション(infusion reaction)に注意しよう!
ニボルマブ療法のポイントB
- ニボルマブは、さまざまな免疫関連有害事象に注意しよう!
ニボルマブ療法のポイントC
- 有害事象出現のサインを逃さないよう、注意深く観察しよう!
ニボルマブ療法の治療成績
進行肺扁平上皮がんに対する二次治療としてのニボルマブ療法の治療成績は、無増悪生存期間が3.5ヶ月、全生存期間が9.2ヶ月,奏効率が20%でした1)。
また、進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対する二次治療としての治療成績は、無増悪生存期間が2.3ヶ月、全生存期間が12.2ヶ月,奏効率が19%でした2)。
memoがんの治療成績でよくみる奏効率とは?
奏効率とは、治療によってすべての腫瘍が消失する「完全奏効(CR;complete response)」と、ある一定の割合以上に縮小する「部分奏効(PR;partial response)」の確率を合わせたものです。つまり、「奏効率=CR+PR」です。
例えば、奏効率80%の治療というのは、「80%の確率で腫瘍が縮小、もしくは消失する治療」ということになります。
また、最近、「病勢コントロール率」という言葉をよく耳にします。これは、奏効率に腫瘍が増大しない「不変(SD;stable disease)」の確率を合わせたものです。つまり、「病勢コントロール率=CR+PR+SD」です。
- 第2話:『ニボルマブ療法(看護・ケアのポイント)/肺がん』
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[文 献]
- (1)Brahmer J, Reckamp KL, Spigel DR, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Squamous-Cell Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med 2015; 373(2): 123-35. (2017/5/16アクセス)
- (2)Borghaei H, Paz-Ares L, Brahmer JR, et al. Nivolumab versus Docetaxel in Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med 2015; 373(17): 1627-39. (2017/5/16アクセス)
[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
久保寿夫
岡山大学病院 腫瘍センター
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。
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