酸素療法中に、患者が口渇を訴えたら どうするの?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「患者の口渇」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
酸素療法中に、患者が口渇を訴えたら どうするの?
酸素の加湿のみで対処しようとせずに、口渇の原因を考えて対応しましょう。
〈目次〉
口渇の考え方
一回換気量に含まれる酸素量は少ない。そのため、口渇の改善を目的として酸素加湿を行っても、一回換気量のごく一部を加湿したことにしかならず、効果的ではない。
口渇時は、酸素流量にかかわらず口渇の原因を考える。
原因別・口渇への対応
1脱水による口渇
脱水による口渇ならば、酸素加湿より、含嗽のほうが効果的である。
水分出納バランスや尿量・尿比重、中心静脈圧などから体液量を評価し、脱水の是正を医師と検討する。
2口内の不感蒸泄増加による口渇
頻呼吸時の口呼吸など、口内の不感蒸泄増加による口渇であれば、口内の清拭や、保湿剤の塗布などで対応する。
頻呼吸時は飲水をさせない。なぜなら、飲水は、1呼吸サイクル中の「休止期」に行うため、休止期がなく息止めができない頻呼吸の状態では、誤嚥リスクが高いからである。
[文献]
- (1)田勢長一郎:酸素療法・酸素療法の適応と中止.丸川征四郎,槇田浩史 編,呼吸管理・専門医にきく最新の臨床,中外医学社,東京,2003:58-60.
- (2)瀧健治:呼吸管理に活かす呼吸生理 呼吸のメカニズムから人工呼吸器の装着・離脱まで.羊土社,東京,2006:95.
- (3)Kallstrom TJ. AARC Clinical Practice Guideline:Oxygen thrapy for adults in the acute care facility-2002 revision & update. Respir Care 2002; 47: 717-720.
- (4)宮本顕二:インスピロンQ&A「より安全にお使い頂くために」 Q10.日本メディカルネクスト株式会社.(2014年11月18日閲覧).
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社