体液の量はどこで調節されているの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は体液の調節について説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
体液の量はどこで調節されているの?
成人が1日に摂取する水分量は、約2,500mLです。その内訳は、飲料水1,500mL、食物中の水分800mL、そして摂取した食物中の栄養素が酸化されるときに生じる水分(代謝水)が200mLです(図1)。
図11日の水分出納量
排泄される水分も約2,500mLです。その内訳は、尿1,500mL、便200mL、不感蒸泄(じょうせつ)700mL、汗100mLです。
このように、水分出納の収支のバランスがとれていれば、体内での活動は円滑に行われます。しかし、発汗、発熱、下痢、嘔吐などによって体内水分量が減ると、脱水(MEMO)を引き起こします。
体内の水分量を調節している器官の1つが腎臓です。糸球体からボウマン嚢を通過する水分量は1日に約160Lに達しますが、実際に尿として排泄される量は1,000~1,500mLです。すなわち、糸球体濾過量の99%が再吸収されています。
再吸収は尿細管で行われ、その指令を出しているのが視床下部です。視床下部の浸透圧受容体が細胞外液の不足をキャッチすると、下垂体後葉から抗利尿ホルモン〔ADH(バゾプレシン)〕が分泌されます。体内水分量が減少するとADHの分泌量は増え、尿細管での水分の再吸収を促します。
また、体内水分量が増えすぎると分泌が減り、尿細管での水分の再吸収が抑えられます(「ビールを飲むと分泌が抑制されるホルモン」参照)。
視床下部はもう1つ、のどが渇いたから、水を飲みなさいという指令も出します。
MEMO脱水
発汗、発熱、下痢、嘔吐などによって水分が失われると、末梢神経の不全によって手足が冷たくなり、顔面蒼白、痙攣、嘔吐などの症状が現れます。進行すると生命をも脅かします。
※編集部注※
当記事は、2018年12月3日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版