なぜ生体には水が必要なの?|体液の成分と働き
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は体にとって水が必要な理由について説明します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
なぜ生体には水が必要なの?
生体にとって水が必要な理由は多くありますが、そのどれもが、体内の環境を一定に保つこと(恒常性の維持)に関連しています。
まず、水はたくさんの物質を溶かすことができるため、化学反応を行う環境として好都合です。栄養素、老廃物、酸素、二酸化炭素、電解質などを溶かし込み、これらの物質が体内を循環したり、体外に排出できるようにします。
水のもつこの働きを溶媒(ようばい)といいます。水は、多くの物質を溶け込ませて体内を巡り、さまざまな物質を受け渡すことで、体内環境を一定に保っています。
この現象には比熱が大きいという水の性質がかかわっています。比熱とは、1gの物質の温度を1°C上昇させるために必要な熱量のことです。比熱が大きいということは、温度を上げるために多くのエネルギーが必要だということになります。
もし水の比熱が小さいと、外気温の上昇とともに体内の水分の温度も上がってしまいます。その結果、体内のタンパク質が凝固し、死に至ってしまいます。
水の比熱が大きいために、外界から熱が加わっても体温を一定に保つ働きをしているのです。
また水は、体内の熱を体外に放散するときにも役立っています。液体が蒸気になるときに必要な熱量を気化熱といいますが、水は1gあたり0.536kcalと大きな気化熱を必要とします。このため、体表面から汗として水分が蒸発するとき、効率よく熱を下げることができるのです。
※編集部注※
当記事は、2018年11月26日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版