胎児はどうやって栄養分を取り込んでいるの?
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は胎児の栄養に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
胎児はどうやって栄養分を取り込んでいるの?
私たちは肺で酸素を取り入れ、肝臓で摂取した栄養を代謝することによって、体が必要とする物質を得ています。しかし、胎児期は胎盤が肺と肝臓の代役を務めており、これを胎児循環といいます(図1)。
まず、胎児と母体を結ぶ臍帯(さいたい)をみてみましょう(MEMO)。
MEMO臍帯(さいたい)
胎盤と胎児のへそをつなぐひも状の器官で、へその緒ともいいます。臍帯には健康な血球成分の素になる造血幹細胞が豊富に含まれています。
臍帯には3本の血管が含まれています。そのうちの2本は細い動脈で、残りの1本が太い静脈です。動脈には静脈血が流れており、また静脈には動脈血が流れています。
胎盤で母体から酸素や栄養分を取り込んだ臍静脈血の一部は門脈へ、残りの臍静脈血は静脈管を経由して肝臓を通過することなく直接下大静脈(かだいじょうみゃく)へ入り、心臓へ流入します。 母体からの血液に含まれる栄養分は、胎児の体内でそのまま使えるように、母体の肝臓で代謝されているので、未熟な胎児の肝臓を通過する必要がないからです。
心臓へ向かった血液は、まず右心房に入ります。出生後であれば、右心房から右心室に入り、肺動脈を経て肺に送られてガス交換がなされます。
しかし、母体から流れ込む血液には、酸素が豊富に含まれているので、胎児はガス交換をする必要がありません。そのため、血液の一部は右心房から卵円孔(らんえんこう)を通って左心房に入り、残りは右心房から右心室へ入り、肺動脈に送られます。肺動脈に入った血液は肺には行かず、動脈管(ボタロー管)を通って大動脈に注ぎます。
それでは、胎児の体を循環して酸素が消費された血液はどのようにガス交換されるのでしょう。出生後であれば右心房から右心室に流れ込み、肺動脈を通って肺でガス交換を行うことになります。
しかし、胎児の場合は肺が機能していないので、そのまま臍動脈に流れ込み、胎盤に達します。胎盤では絨毛と脱落膜の接するところで、ガス交換や栄養素の摂取が行われ、再び臍静脈へと流れ込むという仕組みになっています。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版