腹腔鏡手術って本当に痛くないの?
『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「腹腔鏡手術」に関するQ&Aです。
後藤航
大阪市立総合医療センター消化器外科
井上透
大阪市立総合医療センター消化器外科
編著 西口幸雄
大阪市立十三市民病院病院長
腹腔鏡手術って本当に痛くないの?
いいえ、痛みはあります。ただし開腹手術と比較して傷が小さいため、痛みの程度が減少します。
〈目次〉
腹腔鏡手術の特徴とは?
例えば大腸の手術の場合、開腹手術では約15~29cmの切開を行うことに対し、腹腔鏡手術(図1)では約4~5cmの切開と4~5個の約1cmの切開で行います(図2)。
腹腔鏡手術の場合、創が小さく分散しているため、美容上の利点に加えて疼痛の軽減、鎮痛薬使用の減少といった利点が報告されています。
しかしながら、疼痛の軽減や鎮痛薬使用の減少など、低侵襲手術としてのメリットが数多く報告されているものの(1)、日本における腹腔鏡手術の低侵襲性の客観的評価は十分ではありませんでした。
近年、JCOG0404試験における他施設共同のRCT(ランダム化比較試験)において、結腸がんおよびRs直腸がんにおける鎮痛薬使用の軽減を含めた腹腔鏡手術の低侵襲性が報告され、現在では低侵襲性が証明されているといえます。
腹腔鏡手術で痛みの程度を軽減する工夫とは?
腹腔鏡手術による美容上の利点と低侵襲性をさらに追及するため、近年は小切開創を減らしたReduced port surgery(減孔式)や1つの小切開創のみで行う単孔式腹腔鏡手術の数が増えてきています(2)。これらの術式は美容の点では有意ですが、従来の腹腔鏡手術と周術期疼痛軽減効果を比較した成績は、現在検討中です。
腹腔鏡手術に伴う周術期疼痛を軽減させるため、麻酔法においては硬膜外麻酔や経静脈的自己調節鎮痛法(intravenous patient controlled analgesia:IV-PCA)が行われています(静脈投与と硬膜外投与の欠点と利点参照)。
近年、腹腔鏡手術では痛みが軽減されていることを考慮し、硬膜外麻酔法まで施行せずに、より安全である腹直筋鞘ブロックや腹横筋膜面ブロックを用いた超音波ガイド下末梢神経ブロックの腹腔鏡手術への応用が注目されています(3)。これらの麻酔法と腹腔鏡手術を併用することでより疼痛軽減を図れることが期待されます。
腹腔鏡手術の利点と欠点
表1に腹腔鏡手術で多く報告されている利点と欠点をまとめました。
進行がんや緊急疾患の際には、開腹手術のほうがより広い視野で短時間で治療を行えることもあり、個々の病態に応じた術式が選ばれます。
利点 | 欠点 |
---|---|
1.創が小さい 2.術後疼痛が少ない 3.出血量が少ない 4.術後癒着が少ない |
1.手術時間が長い 2.視野が制限される 3.手術操作の難易度 が高い 4.気腹操作に伴う合 併症(肺塞栓など) |
⇒〔術前・術後ケア〕記事一覧を見る
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『術前・術後ケアのこれって正しい?Q&A100』 (編著)西口幸雄/2014年5月刊行/ 株式会社照林社