ショック・スコア(Shock Score;SS)|知っておきたい臨床で使う指標[5]
臨床現場で使用することの多い指標は、ナースなら知っておきたい知識の一つ。毎回一つの指標を取り上げ、その指標が使われる場面や使うことで分かること、またその使い方について解説します。
根本 学
埼玉医科大学国際医療センター 救命救急科診療部長
ショック・
スコア(Shock Score;SS)
ショック・スコア(Shock Score;SS)は、1979年に小川らによって提唱されたショックの定量的評価法です(1)。ショックを定量的に評価する目的で作成されたものであり、さまざまな原因でショック状態に陥っている患者を評価するための指標です。
〈目次〉
ショック・スコア(Shock Score;SS)
SSを主に使う場所と使用する診療科
SSは、評価項目が、1)収縮期血圧(mmHg)、2)脈拍数(回/分)、3)Base excess(mEq/L)、4)尿量(mL/時)、5)意識状態の5項目であるため、主として集中治療室で、集中治療医や救急医によって使用されています。
SSで何がわかる?
SSは、ショックを定量的に評価する目的で作成されたものです。
評価項目にBase excess(BE)と尿量が含まれていることから、患者の全身状態も含めて、さまざまな原因でショック状態に陥っている患者を評価することができます。
ただし、評価項目に意識状態が含まれているため、重症頭部外傷を合併している場合や、鎮静されているような場合では正しい評価を行うことが難しくなってしまいます。
また、時間尿量も評価項目になっているため、救急現場や救急初療室などで初期の評価として使用することができないことを知っておきましょう。
SSをどう使う?
SSを使ったショックの重症度評価は、収縮期血圧、脈拍数、BE、尿量、意識障害のそれぞれの評価項目に0~3点の点数をつけ、その合計点で評価します。
合計点が0~4点は非ショック、5~10点を中等症ショック、11~15点を重症ショックと定義されています。
例えば、収縮期血圧:82mmHg、脈拍数:124回/分、BE:-8、時間尿量:40mL、意識状態:軽度の応答遅延の場合は以下のようになります。
・収縮期血圧:82mmHg→1点
・脈拍数:124回/分→2点
・BE:-8→1点
・時間尿量:40mL→1点
・意識状態:軽度の応答遅延→1点
以上で合計6点となり、中等症ショックであると判断します。
SSを実際に使ってみよう
症例1
24歳の男性。交通事故で救急隊が収容依頼の連絡をしてきた。
意識は清明。血圧140/80mmHg、脈拍数82回/分・整、呼吸数:20回/分、動脈血ガス分析でBEは-8 mEq/L、来院後1時間の尿量は56mLであった。
この患者のショック・スコアを使った重症度は?
答え:非ショック
収縮期血圧が0点、脈拍数0点、BE1点、尿量0点、意識状態0点で合計1点で非ショックと判断できる。
症例2
56歳の男性。C型肝炎および肝硬変症と診断されている。今朝、トイレで大量の吐血があったため、救急車で搬送されてきた。救急外来で止血処置を行い、集中治療室に入院となった。
入院2時間後の記録では、意識は昏睡。血圧92/72mmHg、脈拍数112回/分・整、呼吸数20回/分、動脈血ガス分析でBEは-12mEq/L、尿量は48mLであった。
この患者のショック・スコアを使った重症度は?
答え:中等症ショック
収縮期血圧1点、脈拍数1点、BE2点、尿量2点(2時間で48mLということは1時間当たり24mL)、意識状態3点で合計9点となり、中等症ショックと判断できる。
症例3
34歳の男性。交通事故で搬送されてきた。
検査の結果、腹腔内大量出血と判断され緊急手術となった。術後は気管挿管下に人工呼吸管理が行われており、鎮静剤が持続投与されている。
集中治療室入室1時間後の記録では、意識はGCS評価でE1 VT M4。血圧124/72mmHg、脈拍数124回/分・整、呼吸数18回/分、動脈血ガス分析でBEは-4mEq/L、尿量は24mLであった。ドレーンからの血液流出はない。
この患者のショック・スコアを使った重症度と治療方針は?
答え:中等症ショックで、補液や輸血による巡検血液量の補充の検討
収縮期血圧0点、脈拍数2点、BE0点、尿量2点、意識状態2点で合計6点となり、中等症ショックと判断できる。
また、尿量が乏しく、ショック指数が1.0(124÷124)であることから、循環血液量は十分とはいえず、治療方針として補液や輸血による巡検血液量の補充が検討されなければならない。さらに、意識レベルは鎮静剤が持続投与されているため、参考に止めておくべきである。
さらにプラスαショック・スコアとショック指数の使い分け
ショックの指標としては、ショック・スコア(SS)のほか、ショック指数(ショックインデックス;SI)があります。
基本的に、ショック状態に陥っている患者の重症度評価はSSでできますが、循環血液量減少性ショックの初期評価はSIを使用するほうがいいでしょう。
具体的に、ショックは循環動態別分類で、循環血液量減少性ショック、心原性ショック、心外閉塞・拘束性ショック、血液分布異常性ショックの4つに分類されます。
この中でも循環血液量減少性ショックの初期は、心拍数と心筋収縮力は増加し、末梢血管が収縮することで収縮期血圧を維持するため、収縮期血圧でショックの判断をすることができません。
そのため、循環血液量減少性ショックの初期の重症度評価は、ショック指数を使用するほうが、ショックをいち早く認知することができます。
しかし、心原性ショックで徐脈が原因の場合、例えば、心拍数が40回/分・完全房室ブロック、収縮期血圧が80mmHgでは、SI値だと「心拍数÷収縮期血圧」で算出するため、40÷80=0.5で「正常」となり、評価ができなくなってしまいます。こういう場合にはSSで評価しましょう。
SSは、ショックを収縮期血圧や脈拍数だけではなく、BEや尿量などから定量的に評価するため、さまざまな原因でショック状態に陥っている患者を評価することができます。
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