尿路結石は腎盂拡張の原因

画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
今回は、「尿路結石は腎盂拡張の原因」についてのお話です。

 

加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)

 

尿路結石の時に見られることがありますが、腎盂の拡張という言葉を聞いたことがありますか?

 

腎盂・・・聞いたことがないです。
それより、ものすごく痛くて有名な、尿路結石は聞いたことがあります。

 

尿路結石は有名ですね。痛みがものすごく強いため、救急車で来院される患者さんも多いほどです。
七転八倒の痛みというぐらいですからね。

 

そんなに痛いんですか!? 私には耐えられそうにないです!!

 

私も・・・無理かもしれません。
ここでは、腎臓の仕組みや、尿路結石について、しっかりと押さえてください。

 

〈目次〉

 

腎盂が拡張している状態(水腎症)

腎盂拡張とは、腎臓の一部である腎盂が通常時よりも拡張している状態です。

 

腎盂は、尿管とつながっており、最初に尿が溜まる部分です。尿管結石によって、正常な尿の流れが阻害されると、尿管の圧が高くなり、最終的に腎盂の部分が拡張します。これを、水腎症と呼びます。

 

健康なヒトの所見は、「腎盂拡張なし」の状態です。「腎盂拡張あり」は異常所見で、腎臓で作られた尿がうまく流れていないことを表しています(図1)。

 

図1尿路の閉塞による腎盂の拡張

 

尿路の閉塞による腎盂の拡張

 

A:正常な腎盂、B:尿管に結石があり、尿路が閉塞され、腎盂が拡張しています(水腎症)。

 

腎臓は左右に1つずつ、合計2つあるので、診断時には、左右の腎臓を別々に評価していきます

 

ココが大事!腎盂の拡張は異常な状態

腎盂拡張なし・・・正常

 

腎盂拡張あり・・・異常尿路の閉塞あり

 

エコー検査を行う必要がある患者

腎盂拡張は、背部痛や腹痛を訴える患者さんに対して、尿路結石の有無を評価するために行います。

 

間違いやすいポイントですが、尿路結石に水腎症は必発ではありません。そのため、水腎症が無くても、尿路結石を完全に否定することはできません図2)。しかし、水腎症が認められれば、正常な尿の流れが阻害されていることがわかります。

 

図2尿路結石と水腎症の関係

 

尿路結石と水腎症の関係

 

尿路結石=尿路閉塞ではないため、尿路結石=水腎症ではありません。

 

尿路結石が鑑別診断に挙がる状況は、腹痛や背部痛の精査をしていることが多いので、これは強力な情報となります。

 

ココが大事!水腎症に要注意

水腎症を認める患者さんは、尿路結石がある!

 

腎盂拡張の疾患解説

尿路に結石がある状態が尿路結石

尿が流れる道である腎臓、尿管、膀胱、尿道のことを「尿路」と呼びます。尿路結石は、この尿路のどこかに結石がある状態です。

 

結石は、腎臓か尿管に存在する場合が多く、腎臓に結石が留まっている場合は無症状のことが多いです(図3)。

 

図3腎臓内結石の患者

 

腎臓内結石の患者

 

腎臓内に結石がある場合、自覚症状がないこともあります。

 

しかし、尿管に結石が存在する場合は、下腹部や背部の激痛が生じ、救急車を要請される場合も多く見られます(図4)。

 

図4尿管結石の患者

 

尿管結石の患者

 

尿管内に結石がある場合、激痛を伴います。

 

尿路結石の治療方法

結石ができる原因はさまざまですが、食生活の乱れなどが主な原因で、尿中に特定の物質が多くなり、結石ができやすくなることが知られています。

 

小さな尿路結石は、特に大きな問題にはならないので、痛み止めを内服しながら、結石が尿と一緒に自然に出てくるのを待つことになります。しかし、自然に出てくることを期待できないほどの大きな結石の場合は、泌尿器科で専門的な治療を受けることになります。

 

感染症を引き起こした場合は注意

閉塞性黄疸の時と同じように、通常、流れているものがせき止められると、そこには細菌の感染症が起こります。尿路結石も、尿路感染の原因となってしまいますので、結石が繰り返しできる場合には、泌尿器科での治療が必要となります(図5)。

 

図5尿路結石による逆行性感染

 

尿路結石による逆行性感染

 

尿路結石により、細菌が増殖しています。

 

尿路結石の診断方法

一般的に、尿路結石は、エコー検査で確認することができます。しかし、臨床現場では、尿路結石があっても、尿路の閉塞が弱く、腎盂が拡張していない場合は、エコー検査で診断できないこともあります。このような場合には、尿潜血の所見や、CT検査の画像所見を合わせて、総合的に診断します。

 

また、尿路結石の患者さんは、背中を叩くと痛がることがあります。この所見は、叩打痛と呼ばれるもので、尿路結石を疑うための重要な身体所見です(図6)。

 

図6叩打痛のある尿路結石の患者

 

叩打痛のある尿路結石の患者

 

左手の手のひらを患者さんの腰に当てて、患者さんの背中を右手で軽くドンと叩く感じです。尿路結石がある患者さんの場合、痛がることがあります。

 

ナースへのアドバイス

尿路結石の患者さんの多くは、腹痛や背部痛で来院されます。このため、最初に挙がる鑑別診断は多彩で、問診血液検査、他の画像所見などから診断を絞り込んでいきます。

 

尿路結石の診断には、尿の検査が有用です。しかし、患者さんのなかには、尿が出にくくなっている方もいます。そのため、医師が尿路結石を鑑別に入れている場合は、尿カップを用意しておき、患者さんがトイレに行こうとしたら、検体(尿)を取っておくと良いでしょう。

 

筆者の経験でも、救急外来に医師が到着する前に、患者さんがトレイに行こうとした際、上記の流れを理解しているナースが検体を保存しておいてくれたことがあり、とても助かりました。後から、検体を取ろうとしても、「さっき、(尿を)出しちゃったからもう出ないよ…」と患者さんに言われてしまい、機を逸してしまうこともあります。

 

 

Check Point

  • 尿路結石では、エコー検査で腎盂の拡張が見えることがあります。
  • 尿路結石は、痛みの程度が強い疾患で、患者さんは救急車で来院されることもあります。
  • 尿路結石を疑っている場合は、尿の検体を取れるように、尿カップを用意しておきましょう。

 

次回は、実際の腎盂が拡張している患者さんのエコー写真を紹介します。
検査の準備や、申し送り時、看護記録記入時のポイントについてもしっかりと覚えましょう。

 

[次回]

腎盂が拡張しているエコー像

 

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  • ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る

 


[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科

 


Illustration:田中博志

 


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