胆嚢壁が肥厚しているエコー像
画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
[前回の内容]
今回は、「胆嚢壁が肥厚しているエコー像」についてのお話です。
加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)
はい、よくわかりました!
そういえば、胆囊はエコーで観察しやすいってことは、胆囊で起こっている炎症具合もエコーでわかるんですか?
良い質問です! エコーは白黒の画像ですが、実は炎症の具合もわかるんです。
炎症を起こした組織がどのように変化しているかに着目して、この解説を読んで下さい。
〈目次〉
胆嚢壁肥厚のエコー像
炎症とは、外敵や刺激に対して、体が自身を防御するために起こす反応のことです。この反応の多くが、免疫反応と呼ばれるものです。
胆嚢炎の場合、炎症が起きている場所は胆嚢の壁ですので、胆嚢壁が腫れてきます。このため、胆嚢壁は分厚くなり、エコー検査で「胆嚢壁の肥厚」という所見を捉えることができます(図1、図2)。
図1胆嚢壁が肥厚していないエコー像
図2胆嚢壁が肥厚したエコー像
つまり、胆嚢炎の患者さんに行うエコー検査の目的の一つは、胆嚢壁の肥厚を評価することです。
memo炎症により「腫れる」という仕組み
炎症における組織の反応にはさまざまなものがあります。その一つに、「腫れる(腫脹)」という反応があります。
外敵から身を守るためには、攻撃を受けている部分に、それに対抗できるだけの味方を動員しなければなりません。このため、生体は攻撃を受けている部分の血管を拡張し、血管の壁をより多くの細胞が通り抜けられるように変化させます。
この結果、炎症が起きている部分に、水分が多く溜まるため、腫れてくるという仕組みになっています。
エコー検査の準備
外来や病棟でのエコー検査は医師が準備も行う場合が多いですが、看護師の介助があると、医師はとても助かります。検査の前に表1の①~⑤までの準備を行いましょう。
表1検査前に準備すべきこと
① | 患者さんに仰臥位で寝てもらいます。 |
② | エコー機器を患者さんの右側、頭側に設置します。 |
③ | 服にゼリーがつかないように、胸の位置まで服をしっかりとまくり上げます。女性の場合、必要時以外は胸にタオルをかけましょう。 |
④ | 医師がエコー画面を見やすいように電気を消します。 |
⑤ | 検査終了後にゼリーを拭けるようにタオルなどを準備しておきましょう。 |
検査後の片付け
検査後は患者さんの体に付いたゼリーを拭いて、洋服を整えます。また、エコーのプローブを拭いて、機器を片付けます。
申し送り時のポイント
検査結果の申し送りは、エコー検査の結果によって決定された方針まで伝えると、引き継ぎの看護師がわかりやすくなります。
申し送り例①:胆嚢壁肥厚がない場合
右季肋部痛を訴えていたので、腹部エコーを行いました。
肝内胆管の拡張、胆嚢壁の肥厚はなく、少なくとも緊急処置の可能性はなさそうです。
申し送り例②:胆嚢壁肥厚がある場合
右季肋部痛を訴えていたので、腹部エコー検査を行いました。
肝内胆管の拡張は認められませんでしたが、胆嚢壁が肥厚していて、急性胆嚢炎の診断です。
これからCT検査ですが、緊急手術となる可能性があります。
記録記入時のポイント
検査結果の記録は、所見をすべて書く必要はないと思いますが、臨床上必要な陰性所見の記載は残しておくべきだと思います。右季肋部痛に対するエコー検査では、「肝内胆管拡張と胆嚢壁肥厚の有無」がそれに当たります。
記入例①:胆嚢壁肥厚ない場合
記入例②:胆嚢壁肥厚がある場合
Check Point
- 炎症が起きている部分は、水分が多く溜まり、腫れています。胆嚢炎の疑いがある場合は、胆嚢壁が分厚くなっているかを見ます。
- 申し送り時には、胆嚢壁の肥厚の有無がどちらであっても、検査結果によって決定された方針まで伝えましょう。
- 看護記録には、肝内胆管拡張の有無と、胆嚢壁肥厚の有無について記載しましょう。
- 胆嚢壁肥厚は胆嚢炎のサイン
- ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る
[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科
Illustration:田中博志