腎盂が拡張しているエコー像
画像検査のなかでも、エコー(超音波)検査は、侵襲度が低く、簡便に行える検査です。
外来や病棟で、看護師が目にすることの多いエコー検査について、コツやポイントを消化器内科医が解説します。
[前回の内容]
今回は、「腎盂が拡張しているエコー像」についてのお話です。
加藤真吾
(横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科)
腎盂拡張(尿路結石)についてしっかりと理解してもらえましたか?
原因は小さい石ですが、身体に与える影響はとても大きいんです。
尿路結石でも、七転八倒するほどの激痛がある場合と、無症状の場合があるのにはビックリしました。
そういえば、エコーには石も映るんですか?
実は、エコーに石は映りません。
エコー検査では、石による間接的な腎臓の変化を見るんです。
ここでは、典型的なエコー画像を用意しましたので、じっくり読んでください。
〈目次〉
腎盂拡張のエコー像
まずは、腎盂が拡張していない正常な画像を紹介します(図1)。通常の状態では、腎盂のなかに多くの液体は入っていないので、腎盂のエコー画像は白っぽく映ります。
図1腎盂が拡張していないエコー像
次に、腎盂が拡張した画像を紹介するので、図1と違いを比べてみてください(図2)。
図2腎盂が拡張したエコー像
腎盂の拡張を診断するためにエコー検査だけでなく、CT検査(図3)や、X線検査(図4)を行う場合もあります。
図3腎盂が拡張しているCT像
図4左尿管に結石が見えるX線像
エコー検査の準備
外来や病棟でのエコー検査は医師が準備も行う場合が多いですが、看護師の介助があると、医師はとても助かります。検査の前に表1の①~⑤までの準備を行いましょう。
表1検査前に準備すべきこと
① | 患者さんに仰臥位で寝てもらいます。 |
② | エコー機器を患者さんの右側、頭側に設置します。 |
③ | 服にゼリーがつかないように、胸の位置まで服をしっかりとまくり上げます。女性の場合、必要時以外は胸にタオルをかけましょう。 |
④ | 医師がエコー画面を見やすいように電気を消します。 |
⑤ | 検査終了後にゼリーを拭けるようにタオルなどを準備しておきましょう。 |
検査後の片付け
検査後は患者さんの体に付いたゼリーを拭いて、洋服を整えます。また、エコーのプローブを拭いて、機器を片付けます。
申し送り時のポイント
尿路結石で入院適応になることは少ないですが、申し送り時の例を紹介します。エコー検査だけでなく、その他の検査の結果についても報告しましょう。
申し送り例①:腎盂拡張がない場合
背部痛を訴えていたので、エコーで腎盂を評価しましたが、拡張は認めませんでした。
尿潜血も陰性で、尿路結石ではなさそうと考えているようです。
申し送り例②:腎盂拡張がある場合
背部痛を訴えていたので、エコーで腎盂を評価しましたが、腎盂が拡張していました。
尿潜血も陽性で、尿路結石です。これからX線検査に向かいます。
記録記入時のポイント
検査結果の記録は、所見をすべて書く必要はないと思いますが、臨床上必要な陰性所見の記載は残しておくべきだと思います。背部痛に対するエコー検査では、「腎盂拡張の有無」がそれに当たります。
記入例①:腎盂拡張がない場合
記入例②:腎盂拡張がある場合
Check Point
- 腎盂が拡張している場合、エコー検査でも拡張した腎盂が映ることがあるので、しっかりと探しましょう。
- 申し送り時には、拡張の有無や、行った検査の検査結果まで伝えましょう。
- 看護記録には、臨床上、必要な陰性の所見についても記載しましょう。
- 尿路結石は腎盂拡張の原因
- ⇒『初めてのエコー(超音波)検査』の【総目次】を見る
[執筆者]
加藤真吾
横浜市立大学附属病院がんゲノム診断科
Illustration:田中博志