食物が気管に入らないのはなぜ?
『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』より転載。
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今回は「消化の際の咽頭の働き」に関して解説します。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
食物が気管に入らないのはなぜ?
咽頭(いんとう)は、消化器系と呼吸器系の両方に属している器官です。口腔からは食道につながり、鼻腔からは気管にもつながっており、食物と空気の通り道の交差点ともいえます。
それではなぜ、咽頭で食物と空気がしっかりと分けられているのでしょう。消化器系の器官としての咽頭を考えてみましょう。
口腔内(こうくうない)で舌(ぜつ)と歯によって噛み砕かれた食物は、唾液と混ざり合い、飲み込みやすい大きさの塊(食塊)になります。この食塊を飲み込むときには、口を閉じなければなりません。
食塊を飲み込もうとすると、自然に舌の先端が口蓋(こうがい、上顎)に押しつけられるようになり、軟口蓋が咽頭の後壁にぴったりと接触します。この運動により、食塊が鼻腔へ流れ込むことが防止されます(図1)。
図1嚥下運動
次に、舌全体を軟口蓋につけて食塊を咽頭蓋へ送り込みます。このとき、喉頭蓋が降下して気管との交通が遮断されます。それまでは気管と食道に向けて2つの口が開いていますが、食道への道だけが開いた状態になります。この運動により、食塊が気管に入ることが防止されるわけです。
その後、さらに舌根部(ぜっこんぶ)を咽頭の後壁に押しつけ、食塊を咽頭に送り込みます。甲状軟骨(喉仏)と輪状軟骨が前上方に動き、輪状咽頭筋が弛緩して食道入り口部が大きく開くと、食塊が食道に送り込まれます。
そして、食塊が食道の入り口にさしかかると、食道の内側にある輪状筋が蠕動(ぜんどう)運動を始めます。蠕動運動によって食塊は徐々に胃のほうへ送られていきます。この一連の運動を嚥下(えんげ)運動といいます。
MEMO蠕動運動
筋肉の収縮波が、徐々に移動するような運動。ホース状の一部が収縮し、収縮している部分が少しずつ移動することによってしごくように食塊を移動させます。
※編集部注※
当記事は、2016年8月15日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版