消毒・殺菌・滅菌|いまさら聞けない!ナースの常識【4】
毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?
知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。
そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。
Vol.4 消毒・殺菌・滅菌
消毒・殺菌・滅菌の違い
この3つの言葉、正確に区別できる看護師はどれくらいだろうか。
消毒:対象物に付着している病原性のある微生物を、害のない程度まで減らすこと。何をどの程度減らすかにより、高・中・低水準に分かれる。
殺菌:対象物に付着する菌を殺す行為であり、殺す対象や程度を含まない。極端にいえば、10%の菌を殺して90%の菌が残っていても「殺菌した」といえるため、有効性に対する厳密な保証はない。
滅菌:対照物を限りなく無菌に近づけるための工程。国際的に採用されている現在の基準としては「滅菌操作後、100万個のうち1個の対象物に微生物が付着している確率」で滅菌できれば良いとされている。
医療現場において使われる言葉は、滅菌と消毒だ。殺菌は効果の保証がないので、感染予防の意味合いでは使わない。
例えば「ある器具を滅菌(または消毒)後、微生物の付着や増殖がない限り、すべての微生物が存在しない(あるいは使っても感染しない)といえるが、殺菌にはその保証はない」ことになる。
消毒方法いろいろ
高水準消毒:グルタラール、フタラール、過酢酸などで、芽胞が多数存在する場合を除き、すべての微生物を死滅させる。内視鏡などの消毒が多いが、使用する薬剤は刺激臭があったり、一部の金属は腐食しやすいなど、取扱いには注意が必要。
中水準消毒:次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、エタノール、フェノール、クレゾールなどで、結核菌、栄養型細菌、ほとんどのウイルスや真菌を死滅させるが芽胞は残る。薬剤によって、手術部位などの皮膚や手術時手洗い、感染症を持つ患者に使用した器具の消毒などに使われる。
低水準消毒:ベンザルコニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩、両性界面活性剤などで、ほとんどの栄養型細菌、ある種のウイルス、ある種の真菌を死滅させる。手術部位の消毒や粘膜の消毒などに使われるが、金属の腐食などは少ない反面、消毒効果としては弱い。
滅菌方法いろいろ
滅菌には物理的滅菌と化学的滅菌がある。
物理的滅菌の代表はオートクレーブ。飽和水蒸気中で121℃2気圧15分以上加熱し、金属性の器具、布類、シリコン製品(製造元がOKしているもの)等が対象。物によっては115℃1.7気圧30分以上の場合や、非常に病原性の高い微生物なら133℃3気圧で1時間の場合もある。
他にもγ線滅菌がある。シリンジや針、チューブ類などの、熱に弱くかつ高い滅菌効果が必要とされる器具に行う。放射線物質を扱うためメーカーの大規模工場などで行う。対象物を個別パックした後箱詰めし、その段ボール箱ごと巨大な倉庫のようなところへ入れ、厳重に閉鎖し、中にγ線を飛ばして滅菌する。
化学的滅菌の代表はエチレンオキサイドガス(EOG)滅菌だ。滅菌工程終了後に人体に有害なガスを抜く作業が必要なため、時間がかかる。
そういえばワタシがまだ3年目くらいの頃、EOGアレルギーの患者さんがいた。事前に情報があったため必要な器械等はすべて他の方法で滅菌したが・・・どんなきっかけでEOGがアレルゲンである、ということが判明したのかは、未だに謎だ。
【岡部美由紀】