浮腫はなぜ起きるの?

看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。

 

[前回]

心機能が低下するとどうなるの?

 

今回は「浮腫」に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

浮腫(ふしゅ)はなぜ起きるの?

浮腫(MEMO1)は体液の循環に異常が起きると生じます。その原因は4つあります。

 

①心機能障害

②肝機能障害

③腎機能障害

④リンパ管閉塞

 

これらの原因は密接に関連しています。

 

まず、正常の状態を考えてみましょう。

 

体内の毛細血管においては、動脈側では35mmHgの血圧があり、静脈側では15mmHgの血圧があります。そして、血漿タンパク質による膠質(こうしつ)浸透圧が通常の状態で25mmHgあります。

 

膠質浸透圧というのは、血漿中のタンパク質によって生じる浸透圧のことです。タンパク質には水をひき寄せる力があり、毛細血管のような半透膜を隔てて濃い液と薄い液があると、水は濃い液のほうにひき寄せられ、同じ濃度になるように働きます。

 

通常、動脈側では35mmHgの血圧に相当する水が、毛細血管の外に移動しようとしていますが、膠質浸透圧25mmHgが水をひき寄せるため、血管から組織(MEMO2)に浸出する水は35ー25=10mmHgになります。

 

一方、静脈側では15mmHgしか血圧がかかっていないので、水を外に移動させる力(15mmHg)よりひき寄せる力(膠質浸透圧=25mmHg)が大きくなり、その差10mmHg分の水が組織から血管内へ浸入します。その結果、動脈側と静脈側で差し引きゼロになり、浮腫は生じません。

 

ここで、4つの浮腫の原因との関係をみてみましょう。

 

1. 心機能障害によって心臓の右心系(静脈側)が機能低下を起こすと、静脈血が肺に送り出されにくくなり、静脈側にうっ滞を生じ、毛細血管の静脈側の血圧が高くなります。組織に浸出した水分の回収量が減少し、組織に水分が滞留します。

 

2. 肝機能障害によってタンパク質(アルブミン)の合成能が低下すると、血液の膠質浸透圧が低下し、組織に水分が滞留します。

 

3. 腎機能障害によって水分の排泄量が低下すると、体循環量が増し、毛細血管の動脈側の血圧が高くなり、組織に余計な水分が浸出します。そのため尿量が減少します。

 

4. リンパ管は組織の水分を回収して静脈に運ぶ働きがあり、正常な状態では、水分の滞留はすべてリンパ管の働きで解消されています。リンパ管が閉塞すると、末梢の組織から水分が回収できなくなり、浮腫を起こします。

 

COLUMN浮腫が生じた時のケアのポイント

組織に水分が滞留すると浮腫を生じ、血行障害を起こして蒼白(そうはく)になり、冷たく感じるようになります。浮腫によって皮膚や粘膜は薄く伸展し、傷つきやすくなります。また、組織の酸素不足で免疫機能が低下するため、感染を起こしやすくなります。

 

このような状態のときに注意することは、皮膚を清潔に保ち、感染予防のために皮膚を保護することです。清拭(せいしき)を行う際には、強い力で拭きすぎないように注意しましょう。

MEMO1浮腫

浮腫は血液の水成分が組織(組織間隙)に滞留した状態をいいます。

MEMO2組織〔組織間隙(かんげき)〕

血管内、リンパ管内、細胞内を除いた空間が組織間隙で通常組織といいます。組織にたまった水分を組織液(組織間液、細胞間液、間質液)といいます。毛細血管から組織に酸素や栄養を含んだ水分が染み出し、一部が細胞内に入り込みます。この段階で細胞に入った水は細胞内液になり、逆に細胞から二酸化炭素や老廃物を含んだ水が組織に染み出し、再び毛細血管に入り込んで心臓に戻ります。

 

※編集部注※

当記事は、2016年6月13日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

ショックとはどのような状態のこと?

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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