急性間質性肺炎の疑いのある患者さんの聴診音
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この【実践編】では、呼吸器内科専門医の筆者が、疾患の解説と、聴診音をもとに聴診のポイントを解説していきます。
ここで紹介する聴診音は、筆者が臨床現場で録音したものです。眼と耳で理解できる解説になっているので、必見・必聴です!
初学者の方は、聴診の基本を解説した【基礎編】からスタートすると良いでしょう。
[前回の内容]
今回は、間質性肺疾患である「急性間質性肺炎患者さんの聴診音」について解説します。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
間質性肺炎は種類が多く、色々なパターンに分類されることがわかったと思います。
特発性間質性肺炎や薬剤性肺炎、膠原病肺など、たくさんありますね。
今回の急性間質性肺炎の患者さんの聴診音は、どんな特徴があるんですか?
基本的には、急性間質性肺炎も同じです。「間質性肺炎=捻髪音」です。
ここでは、1人の急性間質性肺炎の疑いがある患者さんの症例をもとに、聴診音を紹介します。
〈目次〉
症例:急性間質性肺炎の疑いがある患者さん
ここでは、急性間質性肺炎の疑いがある患者さんの症例について簡単に解説します。自分の担当の患者さんだと思って、イメージしてみてください。その後、実際の聴診音を聴いてみてください。
【85歳、女性】
主訴:咳嗽。
既往歴:25年前から高血圧。
現病歴:10日前からの咳嗽を主訴に受診。これまで肺病変を指摘されたことはない。前医に入院し、ここ数日間は広域スペクトラムの抗菌薬(効果がある菌が多い抗菌薬:ニューキノロン薬など)で治療するも効果がないため当院へ転院。
画像所見:胸部CTでは、肺全体に網状陰影を認める(図1)。昨年の胸部CTでは粗大病変はなかったため、今回急速に出現した可能性がある。
図1急性間質性肺炎の患者さんの胸部CT画像
身体所見:意識清明。SpO2 95%(FIO2 80%のnasal NIPPV使用)、呼吸数 26/min、血圧 120/90、心拍数 95/min。
聴診音:右下肺野背側で聴こえる捻髪音
ココを聴こう!
緑色の部分:「パリパリ」という音
- 本症例では、右下肺野背側(図1青ライン)で、強く大きな捻髪音が聴こえることが特徴です。
- 聴こえる捻髪音は、持続時間が短く高い音です。吸気初期には弱く、次第に強くなっていることがわかると思います。
ナースへのワンポイントアドバイス
急性間質性肺炎の患者さんを聴診する際には、主に下肺野を中心に行いましょう。
また、薬剤性間質性肺炎や膠原病肺の可能性が低く、感染症ではないと診断された患者さんの場合、急性間質性肺炎の疑いが強くなるため、ステロイドパルス療法を行うこともあります。可能であれば、気管支鏡を使い、原因菌を検出するのがベストです。
memoステロイドパルス療法
炎症を抑えるため、大量のステロイドを点滴で投与する治療法のことです。具体的な投与方法としては、メチルプレドニゾロン 1g/日 点滴静注を3日間連続投与、などがあります。
*聴診音は、筆者が実際の症例で収録したものです。そのため、一部で雑音も入っています。
[文 献]
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
協力:株式会社JVCケンウッド