1日にどれくらいの尿が生成されるの?|尿の生成
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「尿の生成」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
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〈目次〉
尿は血液から生成されるって本当?
体内を循環してきた血液の中には、末梢から回収してきた老廃物が多量に含まれています。この老廃物を血液から濾過(ろか)し、尿を生成するのが、腎臓の働きです。
腎臓には毎分1Lの血液が流れ込んでおり、これは心拍出量(4~5L/分)の約20%に相当します。腎動脈から流れてきた血液は、毛細血管から輸入細動脈を経てボウマン嚢の糸球体に入っていきます。
このとき、輸入細動脈の収縮期血圧は60~90mmHgで、ほかの毛細血管の血圧よりもとくに高くなっています。一方、ボウマン嚢の内圧は5~13mmHgです。そのため、糸球体を血液が流れる間に、圧差によって濾過が行われます。
この濾過は、糸球体の血圧からボウマン嚢の内圧を引いた圧差(血液が糸球体を内側から押す力で、水分が糸球体の外側に出ようとする力)による無選択的な浸出ですが、糸球体の内皮細胞層からは高分子物質は浸出しません。こうしてボウマン嚢で濾過された尿を原尿といいます。
この段階では、そのまま尿として排泄されるわけではありません。糸球体の基底膜が障害されると、本来なら濾過されない物質(タンパク質や赤血球など)が尿の中に出てしまい、タンパク尿や血尿が出現します。基底膜障害の代表的な疾患が腎炎などの糸球体疾患です。
MEMO糸球体疾患(しきゅうたいしっかん)
糸球体疾患は、急性糸球体腎炎、急性進行性腎炎、反復性(持続性)血尿、慢性腎炎、ネフローゼ症候群などに分類されます。
1日にどれくらいの尿が生成されるの?
原尿が生成されるまでの過程を「尿は血液から生成されるって本当?」で説明しました。こうしてつくられる原尿の量は体表面積に比例していますが、成人の1日の原尿量は約150~180Lです。
しかし、原尿は単に分子の大きさによって選別されたものですから、身体にとって必要な物質も多く含まれています。
そこで、次の段階として行われるのが、尿細管における再吸収です。再吸収を終えた後、尿として排泄されるのは原尿の1%です。
原尿の再吸収はどこで行われるの?
原尿には、水、グルコース、アミノ酸、電解質などが含まれています(図1)。
これらの身体に必要な成分をそのまま排泄してしまわないように、再吸収が行われます。最初の吸収は胃腸管(消化管)で行われます。2度目の吸収なので再吸収といいます。再吸収を行うのは、ボウマン嚢に続く尿細管です。
図1尿が生成される仕組み
ボウマン嚢を通過した原尿は、まず近位尿細管に流出します。近位尿細管でグルコース、アミノ酸などは完全に再吸収されます。また、水、ナトリウム、塩素、カリウムなどはここで70~80%再吸収されます。
次に、原尿はヘンレ係蹄(けいてい、ヘンレループ)に移り、ここでも水、ナトリウム、塩素、カリウムなどが再吸収されます。
最後に遠位尿細管に移り、同様に再吸収が行われます。尿細管では再吸収を行うと同時に、血液中の不要な物質(アンモニア、クレアチニンなど)を尿中に捨てています。
代謝後不要となった尿素、尿酸塩、リン酸塩、クレアチニン、アンモニアなどは血液中から尿細管に向けて物質が移動し、この現象は分泌といいます。尿細管を通過した結果、水の99%と、アミノ酸、グルコース、電解質など、身体にとって必要とされる物質は再吸収されます。残りの1%の水が、老廃物などの身体に不必要な物質を溶かした状態で排泄されます。
1日の尿量は成人で1~2Lです。尿量が多い場合は多尿(たにょう)、少ない場合は乏尿(ぼうにょう)といいます。
MEMO尿の成分
尿素、尿酸、クレアチニン、塩素、ナトリウム、カリウム、アンモニアなどが含まれており、pH5~7、色は淡黄色です。
MEMO多尿と乏尿
1日に3Lを超える尿量を多尿、0.4L以下を乏尿といいます。1日に0.1L以下になると無尿といいます。
※編集部注※
当記事は、2016年11月10日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版