腎臓の果たす役割は排泄だけなの?|腎臓の形と役割
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「腎臓」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
[前回]
〈目次〉
腎臓はどんな形をしているの?
泌尿器系を構成している臓器は、腎臓、尿管、膀胱、尿道です。そのなかで中心的な役割を果たすのが腎臓です。
腎臓は大きいそら豆のような形をした臓器で、内部に固有の組織が詰まっている実質臓器です。
大きさは約10cm×5cm×3cm、重さは約150gです。下腹部にある臓器ではなく背中に近い後腹膜部位にあります。左腎に比べて右腎がやや下がった位置にあるのは、右腎の上部に肝臓があるためです。
脊柱側の側面はややへこんだ形になっており、この部分を腎門といいます。腎門には腎動脈、腎静脈、尿管、神経、リンパ管などが出入りしています。腎臓の真上には副腎(ふくじん)がついていますが、腎臓とは機能が異なり、内分泌系を担当しています。
MEMO実質臓器
腎臓、肝臓、膵臓、分泌腺、胸腺など、その内部が、その臓器が機能するための細胞や組織で満たされている臓器を実質臓器(固形臓器)とよびます。これに対し、胃腸管(消化管)、気道、尿路、精路、卵管、子宮、腟など、内部が管状で物質の通り道になっている臓器を中腔臓器(管腔臓器)といいます。
腎臓の中はどうなっているの?
腎臓は、中身が密に詰まった臓器です(図1)。
図1腎臓の構造とネフロン(腎単位)
表面は皮膜でおおわれており、そのなかに皮質と髄質があります。皮質には直径約0.2mmの微細な粒子(糸球体)が約100万個(左右合計で約200万個)集まっており、糸球体とボウマン嚢を合わせて腎小体(じんしょうたい)といいます。1個の腎小体には尿細管がつながっており、腎小体と尿細管を合わせてネフロン(腎単位)といいます。
腎小体には、毛細血管が糸くずを丸めたようにたくさん集まっている糸球体があります。糸球体は血液を濾過して尿のもと(原尿)をつくる部分で、腎機能の重要部門を担っています。糸球体を包んでいる袋がボウマン嚢(のう)です。糸球体で濾過された原尿は、ボウマン嚢に集められます。
髄質には、ボウマン嚢から原尿を集める尿細管が集まっています。尿細管は皮質→髄質→皮質→髄質と複雑に曲がりくねりながら往復し、長さは4~7cmあります。尿細管は部位により近位尿細管、ヘンレ係蹄(けいてい、ヘンレループ)、遠位尿細管とよばれます。尿細管が合流して集合管になり、腎盂(腎盤)へ続いています。
腎臓の果たす役割は排泄だけなの?
腎臓の重要な働きは、血液を濾過して尿をつくり、体内で生じた老廃物を体外に排泄して血液をきれいに保つことです。しかし、腎臓は尿をつくるだけではありません。
体内の水の量や体液の電解質を調整し、体液が常に一定の状態に保たれるように制御する、血圧を制御する、ビタミンDを活性化する、赤血球産生を促進するホルモン(エリスロポエチン)を分泌して赤血球の産生を促すなど、多彩な働きをしています。
※編集部注※
当記事は、2016年11月7日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版