脈拍測定で何が分かるの?
看護師のための解剖生理の解説書『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
[前回]
今回は「脈拍」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
〈目次〉
脈拍測定で何が分かるの?
脈拍は心臓が周期的に収縮して血液を送り出すときの拍動で、体表面近くの動脈によって触知できます。
このとき、動脈内圧の変動が末梢に伝えられる速度を、脈波伝播(でんぱ)速度といいます。脈拍測定に用いられる動脈は、頸動脈、橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈、足背動脈などです。
脈拍測定では脈拍数(健康成人60~80回/分)、調律(整脈、不整脈)、大きさ(脈圧)、遅速(脈の振れ幅が変化する速さ)、緊張度(動脈壁の緊張度)、部位差(左右差、上下肢差)などをみます。これらの情報を得ることで、心臓、血管、神経系、内分泌、代謝などの状態がわかります。
脈拍数は心臓の活動状態を表しており、交感神経が優位になっている場合は速く、副交感神経が優位になっている場合は遅くなります。また、脈拍数は臥位<座位<立位の順で多くなります。
心拍数が1分間に100回以上の場合を頻脈(ひんみゃく)、50回以下の場合を徐脈(じょみゃく)といいます。脈拍のリズムを知ることによってわかるのは、脈拍が規則的か不規則かということです。心拍数やリズムが不規則な状態を不整脈といいます。
MEMO脈波伝播速度
大動脈で4m/秒、中動脈で 8m/秒、小動脈で16m/秒というように、脈波が末梢に伝わる速度は、血管が細くなるにつれて速くなります。この速度は、血流速度の15~100倍にも達します。
MEMO頻脈(ひんみゃく)と心筋の虚血
頻脈になると心臓の拡張期の時間が短くなるため、心室に充満する血液量が減ります。そのため 1 回の心拍出量が減り、これを補うために心拍数が増加します。頻脈状態では、心臓に栄養を送る冠状動脈の循環血液量も減り、心筋の虚血が生じます。
脈拍に左右差が出るのはどんな時?
正常では脈拍の左右差はありません。左右で差が生じるのは、動脈に狭窄があるときです。
動脈に閉塞がある側では、脈の触れ方が小さくなったり、脈拍数が少なくなることがあります。
※編集部注※
当記事は、2016年7月18日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック 第2版』 (監修)山田幸宏/2023年8月刊行/ サイオ出版