毛細血管に関するQ&A
『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は「毛細血管」に関するQ&Aです。
山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長
[前回]
〈目次〉
毛細血管ではどのように酸素をやり取りしているの?
毛細血管は動脈と静脈をつなぐ直径5~20μm(多くは7μm)の血管で、酸素を運ぶ赤血球がようやく通過できる程度の太さしかありません。
また、動脈や静脈のように平滑筋をもたず、1層の内皮細胞と基底膜から構成されるため、物質の透過性に優れています。血管壁の細胞の隙間をとおして血液と組織の間で物質交換ができるのは、この透過性のおかげです。
こうした優れた透過性があるため、毛細血管は別名、交換血管ともよばれます。
毛細血管が網の目のようになっているのはなぜ?
毛細血管は生体中のあらゆる細胞に酸素や栄養を届ける必要があります。そのため、それぞれの毛細血管が相互に網の目のようにつながれ、全身の組織に張り巡らされています。
このように、網の目状につなぎ合わされていることを、血管の吻合(ふんごう)といいます。
血管相互の吻合があれば、たとえ1本の流入動脈が閉塞して血流が途絶えてしまっても、ほかの動脈からの血流を得られるため、組織や細胞は活動を維持することができます。
終動脈とはどんなもの?
動脈は枝分かれを繰り返し、組織内に行くにつれて細くなり、毛細血管になります(動脈側毛細血管)。
この毛細血管は、組織液を介して二酸化炭素や老廃物の回収を行い、静脈側毛細血管として静脈に戻ってきます。
動脈側毛細血管と静脈側毛細血管は、網の目のようにつながっていますが、なかにはこのつながりから外れた動脈側毛細血管があり、これを終動脈といいます。
組織に流れ込んでいる毛細血管が終動脈だった場合、ほかの動脈からの血流の助けがないので、閉塞するとそこから先の細胞への血流が不足し、組織が変性、あるいは壊死(えし)してしまいます。終動脈は脳、肺、肝臓、心臓、脾臓などにみられます。
脳内血管の毛細血管が閉塞すると脳梗塞(のうこうそく)を起こし、心臓を養う冠状動脈が閉塞すると心筋梗塞(しんきんこうそく)になります。脳梗塞に対しては血管内治療、心筋梗塞に対してはカテーテル治療が行われています。
毛細血管の血液がゆっくりと流れるのはなぜ?
血流の速度は血管によって異なります。一般の交通網と同じく、太い血管ほど血液の流れは速く、細くなるほど遅くなります。
心臓を出たばかりの大動脈では、秒速50cmの猛速度で血液が流れます。しかし、末梢の毛細血管では秒速0.5~1.0cmとゆっくりした流れになります。
このように血流の速度に差があるのは、それぞれ目的が異なるからです。
大動脈のように太い血管は、できるだけ早く血液を全身の各組織に送ることが使命です。これに対して毛細血管は、細胞との間でガス交換などの物質交換を行うのが仕事です。そのため、毛細血管の血液はゆっくりと流れているのです。
毛細血管で物質交換を終えた血液は、静脈に入ると速度を上げ、静脈内では約秒速25cmになります。
※編集部注※
当記事は、2016年7月4日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版