入浴の湯の温度は40~43℃が適当とされているのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は入浴に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

入浴の湯の温度は40~43℃が適当とされているのはなぜ?

 

一般的には、40~43℃の温度が、温熱作用として皮膚筋肉血液循環を盛んにし、心機能を亢進させて全身の代謝を高めるためです。

 

〈目次〉

 

入浴が好ましくないのは

入浴は全身を清潔にするのに最もよい方法です。したがって、入院中の患者も入浴するのが好ましいわけですが、エネルギーの消耗が大きいため、高血圧心臓疾患などでは入浴を絶対にしてはいけない場合もあります。

 

入浴の全身への影響は

一般に42℃以上を高温浴37~39℃を微温浴とよんでいます。42℃以上の高温になると、その温度刺激により、皮膚の血管はまず収縮し、次いで拡張して心機能を亢進させます。

 

したがって、入浴直後に一過性の血圧の著しい上昇がみられるので、高血圧動脈硬化のある患者には好ましくありません。しかし、このような患者の場合でも微温浴ですと、入浴直後から血圧は下降し、38℃で20分入浴しても血圧の上昇は認められないといわれています。また、入浴は皮膚を清潔にするばかりではなく、全身への影響としては、以下にあげた3つの作用があります(図1)。

 

図1入浴が全身に及ぼす作用

入浴が全身に及ぼす作用

 

入浴・シャワー浴の介助

皮膚粘膜の清潔を保つことは、免疫力を高め、感染防止につながります。また、爽快感を得て身だしなみが整うことで気力も向上します。・患者さんが準備をしている間、看護師は防水エプロンや長靴などを着用します。その間も、転倒予防のために患者さんから目を離さないようにしましょう。

 

図2浴室の構造

浴室の構造

 

  • 浴室に入ってからも、石けんの泡やお湯によって滑りやすくなっています。患者さんがバランスを崩していないか、段差や障害物がないかなどに気をつけて、絶えず患者さんから目を離さないようにしましょう(図2)。
  • 浴槽に入れる場合は、入浴する直前にも看護師自身が浴槽のお湯の温度を確認をしましょう。
  • シャワーのお湯の温度は、看護師が確認を行った後、患者さんにも確かめてもらい湯温の好みを確認しましょう。
  • 湯をかける際は、末梢(上肢・下肢)から中枢(体幹)に向かってお湯をかけ、身体を徐々に温めます。
  • 立ち上がったり、殿部を洗うために腰を上げたりするときには、手をかける場所や足下の泡を十分に洗い流してから行動してもらい、滑る原因を取り除くようにしましょう。
  • 胸部や陰部を患者さんが洗っているときは、背部に回って肩や背にシャワーを当てるなど、羞恥心に配慮するとともに保温を行いましょう。
  • 高齢者は、入浴に伴う血行動態の変化に対する自律神経系の反応が低下しているため、入浴中や入浴後に意識障害を引き起こし事故につながりやすいという特徴があります。一つひとつの動作をゆっくり行い、入浴時間や室温差に注意しましょう。入浴後に、コップ1杯程度の水分補給も必要です。

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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